今年3月、瀬戸内海に浮かぶ直島で「サービス・ビジネスと科学と新技術」と題したワークショップが開かれました。研究、ビジネス、マスコミなど各界から30人を越える有識者が参加し、従来の考え方にとらわれない自由な雰囲気で議論が行われたそうです。その成果は「直島宣言」として公表されていますが、僕はこの宣言は、閉塞感に満たされた現状を打破し、新しい社会を創りだす基本設計図だと感じました。
直島宣言の全文が、単なる科学・技術専門家の文章と異なるのは、人間、サービス、データが全面に出されている点です。
「感じあい」「助けあう」と言う人間本来の姿に戻るために、科学技術を応用していくと言うこと。「アフェクティブ(感情)・サービス」と「アフェクティブ・テクノロジー」をツールに、柔軟で自立した組織を作ると言う方向性は、科学技術よりもむしろ生命としての人間を中心に置く考え方です。
サービスは、従来の科学→技術→サービス(ビジネス)と言う一方向の流れではなく、それら3者が対等に連携してイノベーションを生み出すとの視点も興味深い。つまり、科学や技術からサービスが生まれるだけでなく、サービスが科学・技術へ波及することがより重要になる。これは例えばiPhoneやiPadや数々のウェブサービスを見れば納得できるものです。
最後のデータは、上述した新しい社会を形成するうえでデータ活用していくと言う方法論につながります。従来は定量的なデータ中心であったものを、人間・社会全体のデータ・アーカイブを作り、それらを扱う国際標準を策定し、社会の発展へ還元していく、と言うものです。
以上の3つを通じて、「生命力が躍動する地球」を作る。
直島宣言は私たちが感じているものを端的に言葉にしてくれていると、僕は感じます。科学、技術、社会が互いに助け合い、発展する社会を作るために、この宣言が基本設計図になるだろうし、自分自身の仕事のフィロソフィーにもなると思っています。