局地的大雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」は、数キロメートル程度の狭い範囲に短時間、強く降る雨で、時に大きな被害をもたらしたきた。例えば、2008年神戸市都賀川でおきた増水(小学生、幼稚園児を含む5名が死亡)は、上流で発生した局地的大雨が原因だ。
局地的大雨は、時間・空間のスケールが小さいため、最新の気象予報モデルでも、その予測はできない。これが大きな被害をもたらす一因である。
気象庁気象研究所では、局地的大雨を予測すべく、気象モデルの改善に取り組んでいる。
局地的大雨をもたらす積乱雲は10キロメートルくらいの大きさしかなく、現在の予報で用いられている5キロメートル計算格子ではとらえることができない。ある気象現象をとらえるには、その現象の5分の1スケールの計算格子が必要だ。そこで、気象研究所では、計算格子を2キロメートルまで小さくし、積乱雲の発生予測を可能にする研究に取り組んでいる。実際、2キロメートル計算格子で、ゲリラ豪雨をとらえることにも成功している。
計算モデルがいくら改善されても、観測データから作られる計算の初期値に誤差があれば、正しい予報はできない。特に、積乱雲の発生には水蒸気量の把握が重要だ。気象研究所では、GPS衛星からの信号を使って水蒸気量の分布を推定する研究を進めている。複数のGPS衛星からの信号を観測し、それらの「遅れ」から水蒸気の空間量を推測するものだ。
このような高い精度の気象予測を行うには、現状の1000倍と言う、膨大なコンピュータ能力が必要となる。気象研究所は海洋研究開発機構と協同で、次世代スーパーコンピュータ「京」を使った気象予測計算にも取り組んでいる。
「半日前に市町村単位で予報する」ことを目標に、局地的大雨による災害を防ぐ研究は、日々進んでいる。