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世界の人口増加を可視化する〜"Filling Up" by ADAM COLE


2011年10月31日、国連は世界の人口が70億人を超えたと発表した。一口に70億人と言うが、あまりにも多すぎてイメージがもてない。僕が中高生の頃、「世界の人口はもうすぐ50億人になる」、と習った。それから二、三十年で20億人以上もの増加。誰もがあまりに急激な増加だと感じるだろう。現在世界が直面している様々な問題、食料、エネルギー、経済の問題の根底には、この急激な人口増加が関係しているだろうことは、容易に想像できる。

NPR(National Public Radio)のサイトで、世界の人口増加をテーマにした、センス良い映像が公開されている。Adam Cole氏による"Filling Up"だ。
この映像では、人口をコップに入った水にたとえている。コップは各地域ごとにわかれ、コップにしたたり落ちる水が出生を、コップの底から漏れ出る水が死亡を表す。現在の人口を、出生と死亡の差で表している。わかりやすいアナロジーとシンプルで美しい映像が、世界の問題を可視化する。

"Filling Up"によれば、紀元1000年の世界の人口は約3億人。現在の20分の1以下だった。人類の文明の発展〜医療や食料生産の進歩〜によって、出生率は上がり、死亡率が下がった。コップに注がれる水が増え、漏れ出る水が減れば、当然の帰結としてコップの水位は上昇する。世界の人口が3億人から10億人になるのに800年かかったのに対し、10億人から70億人までは200年しかかかっていない。驚くべき速さを感じる。(補足:日本の統計局のデータによると、この50年間の増加はさらに急で、1960年から2010年の間に30億人から70億人になったことがわかる。)この先人口増加率は鈍化するものの、今世紀後半には、世界人口は100億人に達すると予想されている。

人間が生存する権利を人間が奪うことは許されない一方、地球全体を見た時、人類だけの突出した「繁栄」には誰もが不自然さを感じるだろう。今、世界中が直面している、環境やエネルギー、食料、そして経済の問題は、あまりにも増えすぎた人類が引き起こした、自業自得の結果だとも思えてくる。
「70億人目の赤ちゃん認定証」を報じるよりも、他にやるべきことはあるだろう。

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