「ピタゴラス音階」とは、簡単に言うと、弦の長さで決まる音階のことだ。例えば、弦の長さが半分になると完全8度。1オクターブ上がる。2/3は完全5度で、ドとソの関係だ。3/4は完全4度、ファに相当する。
このようにして音階と弦の長さには、数学的な関係がある。数学者ピタゴラスが、美しいハーモニーの裏にある神の真理を明らかにしようとしたことも頷ける。
このピタゴラス音階の数学を使って音楽を可視化しようと言うのが、Alexander ChenによるBaroque.meだ。対象として選んだのは、バッハの無伴奏チェロ組曲第一番第一曲「プレリュード」。赤い画面の中央に書かれた8本の白線。それぞれの長さは、ピタゴラス音階の原理にしたがった音に対応している。それぞれの「白線」が時間とともに長さを変え、周期的に回転する4つの玉が演奏者となって、バッハの美しい旋律を作り出していく。
Baroque.meの、数学的なルールを基につくられたアニメーションには洗練された魅力を感じる。感性の結晶である音楽と、論理的に構成されたビジュアルが作り出す、第一線のアート作品だと思う。