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サイエンスメディアな日々   インフォグラフィクスな日々

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Tangibleな財布:Proverbial Wallet by M.I.T. Media Lab

http://eco.media.mit.edu/static/proverbialwallets/index.html
"Tangible"とは「触れて知覚できる」こと。現在研究開発されているインタフェースの多くが、この"Tangible"と言う概念を取り入れている。この傾向を裏返せば、今の世の中があまりに「非Tangible」になりすぎた、と言うことだろう。
例えば、財布。昔は、財布が重い時はお金があり、財布が軽ければお金がない、と言うことを「知覚」できた。今夜飲みに行くかどうかと言う決断と、財布の重さは無意識下で一致していて、それが、人間の活動における自然な心地よさを与えてくれていたのだ(お金がない、と言う心地悪さとは別の次元で)。しかし今は、コンビニでもクレジットカードを使える時代。お金は遠くの銀行にあってその実体を知覚することはなく、手元にあるクレジットカードの外観は、預金の多少とはまったく関わりない、一枚の薄っぺらなプラスチーックカードだ。(注:正確に言うと、現代は、お金と言う実体はもはや銀行にもない。完全にバーチャルな記号になっている)

そんな状況の下、お金の実体と感触を取り戻すために開発されたのが、M.I.T.メディアラボの "Proverbial Wallet"。Proverbial Walletは、Bluetooth経由でオンライン・バンクと通信し、次のような機能を実現する。

  • "Bumblebee":銀行口座からお金が引き落とされる度に、財布が振動して、どきどき感を与えてくれる(この機能は、不正な引き落としを気づかせてくれる効果もある)
  • "Mother Bear":財布の真ん中に組み込まれたヒンジの堅さは、毎月の予算に反比例する。つまり、節約したい時はまさに「財布のひもが固く」なる。
  • "Peacock":銀行残高に比例して、財布が膨らんだり縮んだりする。これによって、今どれくらいお金を持っているかが、「身に染みて」わかる。


一見、冗談みたいなガジェットであるが、インタフェースの最先端を行く研究所は、"Tangible"な社会を真剣に実現しようとしている。"Proverbial Wallet"はそのひとつの真面目な試みなのだろうか。何がバーチャルで何がリアルなのか、かなり混乱する世の中になってきたことだけは間違いない。

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