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バスケットボールのポジションはいくつあるか?:"From 5 to 13" by M. Alagappan

http://www.sloansportsconference.com/?p=5431
中学、高校とバスケットボールをやっていた頃、バスケットのポジションは、ガード、フォーワード、センターの3種類だと教わった。その後、大学の頃になるともう少し細分化されて、ポイント・ガード、シューティング・ガード、スモール・フォワード、パワー・フォワード、センター、と言う呼び方が普通になったと思う。多分、「スラム・ダンク」では、こういう呼び方になっているはずだ。

しかし、元来バスケットボールと言う競技にはルール上明確な「ポジション」はない。誰でもシュートを打てるし、誰でもリバウンドを取れるし、誰でも速攻してよい。非常に平等なスポーツだ。バスケットボールの「ポジション」はルールとしてのポジションではなく、戦略上の便宜的な役割を示しているにすぎない。(少し話はそれるが、アメリカ生まれのスポーツは、例えば野球やアメリカン・フットボールのように、非常にシステマチックで、選手の役割や権限もルールとして明確に決められたものが多いように思う。その点ではバスケットボールは例外的かもしれない。)
今、私たちの共通認識としてあるバスケットボールの「ポジション」は絶対的なものではないと言うことに気がつくと、ある疑問が生まれる。それは、「現在のバスケットボールのプレーは、従来考えられてきたポジション(役割)で本当に正しく表現できているのか。違うとすれば、どんなポジションが適切なのか。」と言うものだ。

その答の一つが、米国スポーツ解析学会で発表された。NBAの各選手のプレー・スタイルとポジションは必ずしも一致しないと感じていたスタンフォード大学で生物工学を専攻するMuthu Alagappanは、「ポジション名は簡略化しすぎではないか」「現在のポジション分類は正しくないのではないか」との疑問から、452名のNBAプレーヤーを統計的に分析した。その結果、バスケットボールには13のポジションがあるとの仮説に至ったと言う。(プレゼン資料のP.8)
Alagappan氏が提唱する13のポジションとは次の通り。

  • Offensive Ball-Handler (Jason Terry, Tony Parker...)
  • Defensive Ball-Handler (Mike Conley, Kyle Lowry...)
  • Combo Ball-Handler (Jameer Nelson, John Wall...)
  • Shooting Ball-Handler (Stephen Curry, Manu Ginobili...)
  • Role-Playing Ball Handler (Arron Afflalo, Rudy Fernandez...)
  • 3-Point Rebounder (Luol Deng, Chase Budinger...)
  • Scoring Rebounder (Dirk Nowitzki, LaMarcus Aldridge...)
  • Paint Protector (Marcus Camby, Tyson Chandler...)
  • Scoring Paint Protector (Kevin Love, Blake Griffin...)
  • Role Player (Shane Battier, Ronnie Brewer...)
  • NBA 1st-Team (Kevin Durant, LeBron James...)
  • NBA 2nd-Team (Rudy Gay, Caron Butler...)
  • One-of-a-Kind (Derrick Rose, Dwight Howard...

プレゼン資料だけでは、それぞれのポジションの定義は明確に分からないが、名称からある程度推測もできそうだ。さらに、NBAの代表的なチームの選手がどんな「ポジション」に分布しているかを、可視化を使って比較行している。チームによってポジションの分布が異なることが目で見て分かる。これは文字通りの「チームカラー」と言えるだろう。(同資料のP.10〜P.19)

人間の優れた能力のひとつに、物事をカテゴライズし「名前」をつけることがある。しかし、逆に私たちが名前をつけたものに、私たちの考え方が制約される、と言うこともある。同じグループの事物の名前が長らく変わっていない、と言うのは、場合によっては不自然で、思考停止に陥っている危険性がある。時には既に構築されたカテゴリーを壊す必要がある。少なくともそういう意識を持って物事を見ることが大事だ。特に新しい物事を始める際は、「レッテルを貼る」よりもまず、「レッテルを剥がす」ことから始めなければいけないのかもしれない。そんなことを感じた研究発表だ。
ちなみに、研究発表のタイトルは、"From 5 to 13(5から13へ)”。タイトル名も既存の枠にとらわれていないのが素敵だ。

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