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重なりあうフラットケーブルのような脳神経の構造:NIHの拡散スペクトラム・イメージング画像


米国国立衛生研究所(NIH)が可視化した脳の構造は驚くべきものだ。

神経線維はフラットな束となって折り重なりあい、まるでハードディスクの「リボンケーブル」のようだ。しかも、各束は並行か垂直のいずれかで整然と重なり合っている。脳は、神経線維の巨大な、そして緻密なネットワークであることがひと目でわかる。

この可視化映像は、神経の軸索(じくさく)の中を流れる水分子の動きを検知する「拡散スペクトラム・イメージング(Diffusion Spectrum Imaging)」と呼ばれる方法で作成されたものだ。脳神経は複雑に折り重なっているため、従来の方法では「見る」ことが大変難しかった。拡散スペクトラム・イメージングによって初めて、折り重なった構造の内部までが見えるようになったと言う。

この研究プロジェクトで最初に撮影したのは、下の画像にある猿の脳の構造。この知見を使って人間の脳の構造を見るための調整が行われ、上のような詳細な人間の脳の神経構造が明らかにできたそうだ。

http://www.extremetech.com/extreme/133651-first-map-of-the-human-brain-reveals-a-simple-grid-like-structure-between-neurons

今回明らかになった人間の脳の地図は、ゲノム地図と同じくらいの価値を持つものになるかもしれない、と言うのは期待しすぎだろうか。
人間にとって最も身近で、最も未知な世界、脳。科学と人間にまたがる最大の謎の解明へむけて、可視化が大きな役割を果たそうとしている。

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