IBMの研究者たちが、アフリカ象牙海岸に臨むコートジボワールの首都アビジャンの交通機関を改善する研究に取り組んでいる。このために彼らが着目したのが、携帯電話の通信データだ。
IBMのこの取組みは、「開発のためのデータ("Data for Development")」と呼ばれる研究プロジェクトの一環。539台の大型バスと5000台の小型バス、11,000台の乗り合いタクシーをあわせ、総計500万人の乗客の、25億回に及ぶ通話データが使われた。これは、この種のデータでは過去最大、また、通話データを交通システムの改善に利用するのも、世界ではじめてだという。
ユーザの通話やEメールは最も近い基地局が中継するため、通信に使われる基地局の移動から、乗客の移動を推定できる。こうして得られたデータはGPSに比べれば粗いが、今回のように総体的な交通量を把握する目的には十分だと言う。発展途上国ではGPSがまだ普及していないため、携帯電話の方がより多くデータを取得できると言うこともある。また、これまで交通量の把握は人出のかかる調査によって行われてきた。携帯電話を使えば調査のコストを大幅に削減できるメリットもある。
IBMによるデータの分析結果から、どこの道路を改修すればよいか、乗り換えをどう変えればよいか、といった改善提案が作られた。実際、65におよぶ改善提案から、2つのバス路線の追加、ひとつの路線の延長が採択され、理論的には移動時間を10%削減できる見通しだと言う。
今回はオフラインでの解析だが、もし通話データをリアルタイムで分析できたら、状況に合わせて最適なバス路線に変えるなど、移動時間と待ち時間を大幅に削減できると研究者は考えている。
社会が膨大なデータを生み出し、膨大なデータが社会を変える。その動きは、世界中で加速している。