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自分自身の個人情報を売るオンラインショップ:Federico Zanier氏の試み

http://myprivacy.info/
小規模でもユニークなアイデアで勝負する、新しいタイプの企業が数多く誕生する中、ニューヨーク大学Tisch School of Artsの大学院生、フェデリコ・ザニエル氏が始めたビジネスは、「小規模」「ユニーク」の両面で群を抜いている。自分自身の個人情報を売るオンラインショップを開設したのだ。

このサイトの「商品」は、フェデリコ自身の行動を記録した、次のようなデータだ。

  • 訪れたウェブページの全テキストデータ(HTML, CSS, Javascript) 2,800,855行。本1,500冊分に相当
  • マウスカーソルの座標と時刻 755,547本/3.457キロメートル
  • コンピュータ画面を覗きこむ自身を撮ったウェブカメラの写真。21,124枚/1.9GB
  • 訪れたウェブページの30秒ごとのスクリーンショット 19,920枚/1.7GB
  • GPSで記録した位置情報とGeoCodingで変換した住所テキスト 19,468マイル/1,980行

データの総計は7GB。44,964個のファイルが71のフォルダーに保存されているという。

オンラインショップのサイトには、日付と種類でデータセットが並べられ、訪問者は購入したいデータを選べるようになっている。価格は1データセットあたり2ドル。インターフェースデザインも、センスよく、使いやすい。


このユニークなオンラインショップを開設した動機について、フェデリコはこう語る。

米国の2012年の年間広告費は366億ドル、2011年より15%増加しています。
インターネット広告の売上はケーブルテレビを抜き、地上波テレビと同等になっています。
一方、2012年、僕の売上はゼロです。2013年はこの状況を変えたいんです。
データは今、注目の商品です。僕の個人情報を、一日2ドルから売ります。


広告業界に限らず、ビジネス全体でますます個人情報の利用が進んでいる。例えばクレジット会社や保険会社、航空会社、通販会社は「パーソナル・マーケティング」の名のもとに、顧客の行動を分析し、その結果に基づいておすすめの商品を提示したり、待遇までも変えていると言う。僕たちが意識している以上に、個人情報はすでに深く利用されているのだ。


実は、このプロジェクトはまだKickStarterで出資を募っている途中で、今のところデータを実際に購入する機能はなく、データを閲覧できるのみだ。ビジネス面での成否はともかく、フェデリコの一見、ジョークや遊びのようにも見えるこの試みは、これからのデータ社会に対して本質的な問題提起を行なっていると思う。僕達の個人情報を他人はどこまで無償で利用してよいのか、また、自分の個人情報を他人に売ることは許されるのか、と言う問題だ。

あなたは、どう考えるだろうか?

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