いつの間にか、多くのものがデジタル化されている。「ペーパーレス」という言葉も死後になりつつあるくらい、PCやスマートフォンだけでテキストや画像を見ることは、ふつうのコトになりつつある。5000年続いてきた「紙の文化」は、ついに終わるのだろうか?紙が与えてくれる、暖かで心落ち着く触感は過去のものになってしまうのだろうか。
そのような流れにささやかな抵抗を試みるのが、クラウドファンディングサイト'Indigogo'でファンドを募っている。「携帯型スマートフォン用写真現像機 'ENFOJER'」なるガジェットだ。
ENFOJERの外観は、旧来の写真現像機そのもの。ただし、機械のヘッドにセットするのはフィルムではなく、スマートフォンなのだ。スマートフォンの画面に表示された画像は、レンズを通して拡大され、感光紙の上に投影される、というしくみ。後は、現像機での現像プロセスとまったく同じだ。投影された画像を印画紙に焼き付け、現像、定着、水洗いのプロセスをへて写真ができあがる。(こちらのページに動画もある。)
ENFOJERにはトイカメラのレンズが使われている。これは、コストを下げるためだけではなく、トイカメラ・レンズのフォーカスの適度な甘さがスマートフォンのLCD画面のピクセルをぼかすことで、より自然な写真を作ってくれるためだそうだ。これぞ、アナログの味だ。なお、現在'ENFOJER'がサポートしているのは白黒写真のみ。
現代なら、インクジェットプリンターを使って、もっと早く、精緻な写真を作ることはできる。しかし、その一方で、モノを自分自身の手で作っているという感覚は失われてしまった。
暗室の赤い光のなかで、印画紙の上に自分の撮影した風景が現れていく様子を見れば、誰だってわくわくするはずだ。ENFOJERは、あえて不便で面倒くさいプロセスを通じて、その「わくわく感」を体験させてくれるだろう。