モバイル機器の普及で、CDで音楽を聞くことも少なくなった。昔、レコードからCDへと移り変わった音楽は、もうSSD(半導体メモリ)とクラウドの時代に入ろうとしている。テクノロジーの進化は歓迎するが、長年集めたCDコレクションが無駄になってしまうのは悲しい。
そんな中、廃れていくCDに再び「光をあてる」研究成果が発表された。しかも、CDを使って水をキレイにするという、思いもよらない使い方だ。
国立台湾大学のツァイ教授らは、CDの盤面上に酸化亜鉛のナノ構造を作った。直径が髪の毛の数千分の一という、ナノサイズの突起だ。
このCD盤を回転させ、盤面に水をかけ、紫外線を当てると、水は盤面を薄く拡がりながら浄化される。酸化亜鉛の光触媒作用によって、水の中の有機物、すなわち不純物が分解されるためだ。
ツァイ教授らは、一時間で約0.5リットルの汚水の浄化に成功したという。CD盤を回転させるのに必要な動力は比較的小さく、水が薄く広がるため紫外線も透過しやすい。このため、他の光触媒浄化装置にくらべ効率的だ、とツァイ教授は言う。現在、さらなる効率化が研究されている。
また民生品として大量生産されるCD盤は、低コストで利用できることも大きなメリットだ。
音楽メディアとしては第一線から引退しようとしているCDディスクが、環境改善という新しい活躍の場を見出そうとしている。音楽コレクションがだめになっても我慢しようと思う。