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食品と健康についての研究成果に一喜一憂するのはやめるべし

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よく◯◯は体にいい、とか、☓☓を食べると癌になる、といった「研究成果」が発表されて一般メディアでも話題になる。でも、中にはお互いに矛盾するものもある。とにかく健康に関する「知見」や情報はあふれていて、消化しきれない感じがする。


冒頭の図は、各食品の癌リスクについて調べたさまざまな論文の結論をプロットしたものだ(*)。この図では、癌の誘引となるものが右側、癌を抑制するものが左側にプロットされている。

ワイン、トマト、紅茶、ミルク、コーヒー…など、さまざまな食品がプロットされているが、一目見て明らかなように、その評価はかなりばらついている。たとえば最近、健康によいと言われることが多いワインも、癌の原因となるという論文もある。一方、健康については旗色の悪いバターにも、癌を抑制する効果があるとする研究結果もある。僕はコーヒーをよく飲むので、「コーヒーは健康に良い」という記事をみつけるとつい喜んでしまうのだが、この図によれば癌を誘引するか抑制するかは拮抗している。残念ながら、コーヒーは「中立」と考えたほうがよさそうだ。

この図から言えるのは、発表される研究成果に一喜一憂するのはあまり意味が無い、ということだ。それぞれの評価が定まるには、まだかなり長い議論と淘汰の時間が必要だろう。そして、その結論が出る頃には、僕自身はもはや健康についての情報を必要としなくなっているかもしれない。


灰色のものに無理に白黒をつけるのは、非科学的な行為なのだ------。

そう納得して余分なストレスがなくなったおかげで、少し長生きできそうな気がする。



(*)同図はVOXの"Science is often falwed. It's time we embraced that."に掲載されていたものを転載した。データの出典は"American Journal of Clinical Nutrision"にのったShoenfeldとLoannidisの論文と記されている.

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