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単純なルールが複雑を創る

http://www.nhk.or.jp/amadeus/quest/43.html
NHKの番組、名曲探偵アマデウスを毎回楽しみに見ています。
誰もが聞いたことがあるクラッシック音楽をとりあげ、その裏に隠された「謎」を解き明かす。時に音楽的に、時に歴史的に、思わず「なるほど!」と思わされる脚本がすばらしい。音楽の裏をより深く知ることで、その音楽をより深く楽しむことができると言う体感が心地よく、いつの間にかファンになってしまいました。

さて、今回の名曲はホルストの「惑星」。クラシックの名曲であることはもちろん、最近の世代は平原綾香さんのヒット曲として、僕の世代は富田勲氏のシンセサイザーを使った革新的な音楽として、印象深い曲です。

「惑星」の圧巻が第4曲の木星であることは、大方一致した意見だと思います。木星はどの部分もそれぞれすばらしいですが、僕は特に、出だしのストリングスが大好きです。たくさんのストリングパートが複雑に絡み合って、重層的で深遠な音楽が生みだされ、広大で神秘的なな宇宙を感じさせます。
こんな複雑で精緻な音楽を作曲できるなんて、ホルストはまさに天才だ、と思っていました。

ところが、昨日の番組を見て驚きました。
この複雑に感じるストリング部は、「ラドレ」と「ミソラ」のそれぞれ3つの音を単純に繰り返すだけの2つの旋律しかないのだそうです。
ただ、少し仕掛けがあって、各パートの開始を一拍ずつずらしています。これだけで、同じ音が重ならずに各拍で毎回違った音の組み合わせになる。(2パートある輪唱のようなものだと思えばよい。)それによって、全体としては複雑で精緻に感じる音楽ができているのです。

複雑な造形の裏には単純なルールがある。

またひとつすばらしい発見を体感することができました。次の名曲探偵アマデウスが待ち遠しい。

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