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ノーベル賞はどこが取っているか〜Forbes誌のインフォグラフィック

http://flowingdata.com/2011/10/10/nobel-laureates-by-country-and-prize/
10月はノーベル賞の季節。今年は残念ながら日本人の受賞はならなかったが、候補者があがるだけでも、我が国の科学のレベルの高さを自慢したくなる。でも、客観的に見て日本は本当に「すごい」のだろうか。

そんな疑問に答えてくれるインフォグラフィクスを、Forbes誌のJon Brunerが作ってくれた。これを見れば、ノーベル賞各賞の受賞国とその推移が一目でわかる。
Forbesの記事によると(いや、記事を見なくても)、アメリカの強さは他を圧倒している。1935年以降、受賞者がなかった1940年から42年を除けば、アメリカは毎年少なくともいずれかの賞を受賞している。ただし、アメリカの受賞であっても、アメリカ国籍とは限らない。314人の受賞者のうち102人(34%)はアメリカで研究中の外国人だ。対して、日本で受賞した外国人は、もちろんゼロだ。この差は、研究環境の充実度の違いか、研究者を引きつける国の魅力の差か。おそらく両方だろう。
ちなみに、第2次世界大戦以前は、ドイツが世界をリードしていたようだ。1901年から31年の間に、38人が受賞している。毎年一人以上のハイペースだ。大戦後はドイツからアメリカに少なからぬ科学者が移住したこともあり、1950年から80年でみるとアメリカの117人に対してドイツは16人しかいない。

これからしばらく、ノーベル賞の主役は幹細胞関連の生命科学素粒子物理学と言われる。アメリカの地位は当分、揺らぎそうにない。それでも、Bruner氏は、「今後もアメリカが世界をリードできるかどうかは、政府の研究支援や教育など、科学をどれくらい大切にするかにかかっている」と警鐘を鳴らしている。科学の「一人勝ち」の国アメリカでさえ、識者はけっして安穏としていられない、と考えているのだ。

一方、ひいき目に見ても、我が日本はこのインフォグラフィックに「かろうじて引っかかっている」程度だと言った方がよい。中国がすぐ後ろに迫っている。
ノーベル賞の対象となる研究は10年から30年昔のものだと言う。日本が今、科学技術を軽視すれば、少なくとも数十年間は追いつけない。科学技術以外に、日本が世界に対して強みを発揮できる分野があるのだろうか。政府も国民も、真剣に考えて欲しい。

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