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草の根の空撮データが社会を変える〜"Grassroots Mapping" by Jeffery Warren/MIT Medialab

http://grassrootsmapping.org/
ビデオ映像を作るための手法はたくさんあるが、「華」のひとつはやはり空撮だろう。鳥になったような視点で見る街や大自然の映像は、普段体験できないが故に大きな魅力がある。しかし問題はコストがかかること。ヘリコプターや小型飛行機をレンタルするのは大がかりになってしまい、撮影するのは(そして、クライアントにその費用を払わせるのは)簡単ではない。

でもあきらめてはいけない。アイデアと熱意があれば何とかなる。そんなヒントになる取り組みが、MITメディアラボのJeffery Warren氏らのグループが行っている"Grassroots Mapping"だ。Grassroots Mappingとは、インターバル撮影できるデジカメを取り付けた風船付きの凧をあげて、しばらく後に回収すると言う、いたってシンプルなもの。材料費は100ドル以下だそうだ。(実際の撮影の様子は、このビデオで見ることができる。)
撮影された画像は、「つなぎ合わせ」ツールを使って高解像度画像に変換される。このツールも特別なものではなく、地図作製用のオンラインツールを使っている。
ローテクな取り組みに見えるが、こうして得られた空撮データは、NASAやNOAA(アメリカ海洋大気圏局)の人工衛星画像よりも解像度が高いと言う。

Warren氏が"Grassroots Mapping"のコンセプトを思いついたのは、ペルーで土地権利問題に携わったことがきっかけで、その後メキシコ湾で石油流出事故が起き、実験的な取り組みを始めたという。石油流出エリアでは4000フィート以下の飛行が禁止されたため従来の空撮が困難な中、Warren氏らのチームはGrassroots Mappingを使って、オイル流出の詳細な画像の撮影に成功した。(下の写真は同じ手法を使って作成した、ニューオーリンズ東方のBorgne湖のマップ)
http://grassrootsmapping.org/

Grassroots Mappingのデータはすべてパブリック・ドメインとして公開されている。さらに一般市民のGrassroots Mappingへの参加を呼びかけている。

私たちは市民が風船、凧、その他の機器を使って、石油流出事故の空撮画像を独自に作ることを支援しています。そのデータは今後、環境や法的な分野で貴重になるでしょう。流出事故の写真をパブリック・ドメインとして公開することが大切だと思っています。

シンプルだから多くの人が参加しやすい。「草の根(Grassroots)」のデータは、これからの社会を変えるかもしれない。そんなことを感じさせる取り組みのひとつだ。

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