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宇宙ゴミを「可視化」する:スペースガードの取り組み


人類が宇宙空間に進出して、50年。未開の地が徐々に把握され、新しい知見が得られた一方、当初は予想していなかった課題も出てきている。そのひとつが地球の軌道上に多数存在する、「宇宙ゴミスペースデブリ)」の問題だ。

宇宙ゴミとは、地球周りの軌道上に漂う、ロケットの本体やその部品、耐用年数が切れた人工衛星などのこと。その数は10cm以上のものだけで2万個以上と言われ、近年急激に増加している。その原因は、中国による風雲1Cの破壊実験(2007年)や、アメリカ通信衛星イリジウム33号とロシアの軍事衛星コスモス33号の衝突事故(2009年)等だ。

宇宙ゴミが問題となっているのは、人工衛星やロケットに致命的な損傷を与える可能性があるためだ。実際、ある宇宙ゴミが宇宙ステーションに衝突する恐れが出て、宇宙飛行士が宇宙船に避難すると言う事件も起きている。さらに、昨年、運用を停止した人工衛星の落下(再突入)があいついで起き、地上にいる我々にも無関係の問題とは言えなくなってきている。

そんな中、世界各国は協力して宇宙ゴミ対策に乗り出している。そのひとつが「スペースガード」と呼ばれる、軌道上の宇宙ゴミを観測・カタログ化し、軌道を把握することで衝突を未然に防ぐ取り組みだ。日本の観測施設は、岡山県の上斎原と美星にあり。上斎原はレーダーを使って低軌道の宇宙ゴミを、美星は1mの光学望遠鏡を使って主に静止軌道宇宙ゴミを、それぞれ観測している。海外諸国は軍事活動の一環としてスペースガードを行っているが、日本だけが非軍事の取り組みである(軍がないのだから、当然だが)。

さらに、宇宙ゴミを観測するだけでなく、軌道上から宇宙ゴミを取り除く研究も進められている。最近海外の研究が話題になったが、日本ではJAXAが、導電性テザーやマイクロリムーバなど、世界最先端のデブリ除去システムの開発を進めている。

華やかな宇宙開発の中で、影の部分と言える宇宙ゴミだが、その対策を後ろ向きに捕らえるのではなく、宇宙開発の技術を向上するチャンスにして欲しいものだ。

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