日本科学未来館で開催中の企画展、「世界の終わりのものがたり〜もはや逃れられない73の問い」は、私たち来場者の「気持ち」を可視化してくれる、興味深い展示だ。
展示ルームの中には様々な問いが掲げられ、来場者はそれに答えていく。ある問いはホワイトボードにマグネットをおくことで、ある問いは自分の思いを書いた付箋紙を貼ることで、ある問いは机の上に置かれた紙に書き込むことで、ある問いはモニタ画面に表示されたウェブ上で。
これは旧来の方法による「参加型の可視化」とも言えるが、それだけではない。この部屋に書かれた問いのほとんどは、その人の生き方の根源に関わるものだ。例えば次の問いに、どう答えるだろうか。
この展示では非デジタルの、生身の感触が確かめられる方法で、来場者一人一人がこの展示に主体的に関わる、と言うことに大きな意味を持たせている。この体感が、展示のテーマ「もはや逃れられない問い」にぴったりと呼応する。
展示ルームにちりばめられた73の問いを見て歩くにつれて、来場者は文字通り「逃れられない」感覚に陥っていく。そして、この展示は来場者に答を与えてくれるのではなく、来場者自身の心を可視化し、それによって成長していく展示なのだ、と言うことに気がつく。
教えてもらうのではなく、来場者が自ら考え、表現し、それよって作られていく展示。
そんなアプローチそのものが、私たち国民の「今の気持ち」を可視化しているのかもしれない。