公園や街路樹、庭など、都会を見渡すと意外に緑が多い。特に都会や高級住宅街と呼ばれるところほど意識して緑を作っている。おそらく多くの人もそう感じているだろうし、自分自身の体感でもそう思う。しかし、それが客観的な事実であることを調べるには、裏付けるデータが必要だ。以前は行政や一部の関係者しか、地域のデータを入手することはできなかっただろう。しかし現代では誰でもアクセス可能な、世界中各地域の様子の詳細なデータセットがある。GoogleEarthだ。
サイエンティフィック・アメリカンやシカゴ・トリビューンでライターとして活躍しているTim de Chant 氏のブログ「都会の緑は収入格差を示す」によると、米国の210都市、10万人の調査の結果、平均収入とその地域の緑化率に相関関係があることがわかったそうだ。平均収入が高い地域と低い地域の「緑化率」の比較は、例えば上に示した、オークランドの2地域、ウェスト・オークランドとピドモンドの写真を見れば、はっきりとわかる。
もちろん、裕福な地域ほど公私ともに緑化に使えるお金が多いだろうから、緑化率の差はしごく当然とも感じられる。都会の緑が「日用品」ではなく、「贅沢品」であることは、Chant氏に指摘されるまでもない。
しかし、Chant氏は、それだけではないと指摘する。都会に緑を増やすことは、夏場の気温を下げ、冷房費を節約したり、大気の浄化にも貢献し、医療費も低下させる。それによって、緑のある地域とない地域の収入格差はさらに広がるだろうと推測する。実際、アメリカの大都市、ニューヨーク、シカゴ、ロサンジェルスなどが積極的に緑化を進めているのは、そういう「緑化の具体的なメリット」も関係していると言う。
今回の記事を読んで興味深いと感じたのは、GoogleEarthのデータを、単なる地図や地形図だけでなく、平均収入と言う社会的な指標の推定に使っていることだ。相関関係の推論ロジックを見いだせば、もっと他の指標にも適用できるだろう。
GoogleEarthを使ったオンライン・データマイニング。けっして絵空事ではないと思う。