今年5月に開業した、東京スカイツリー。世界でもっとも高いタワーは、東京の新名所として連日多くの人で賑わっている。
この東京スカイツリーで、ある研究プロジェクトが始まっている。この鍵となるのが、天望回廊のさらに50m上、地上497mの位置に設置された、ロゴスキーコイルと呼ばれる計測機器だ。このロゴスキーコイルが計測するのは、雷の電流波形。世界が注目する雷研究プロジェクトだ。
なぜ近年、雷研究が重要になっているのか。その理由の一つが、IT化が進みコンピュータやネットワーク機器など、雷の被害を受ける電子機器が増加したことがある。雷被害には、その電流で直接被害を及ぼす直撃雷の他に、雷電流がおこす誘導電流で電子機器に誤作動などをおこす誘導雷と言う種類がある。誘導雷は磁場によって伝わるため、直撃雷よりも広い範囲に被害をもたらす。誘導雷のピークは雷電流のマイクロ秒程度の瞬間的な変化が、誘導雷のエネルギーは数ミリ秒の比較的長い電流変化がそれぞれ影響する。つまり、誘導雷の被害を知るには、マイクロ秒から数ミリ秒にわたる幅広い時間の雷電流の変化(波形)を知る必要があるのだが、今まで雷電流の波形の計測はほとんど行われていないそうだ。
そのような背景のもと、平地にそびえ立つ巨大な東京スカイツリーは、(もっとも高い、もっとも適している、と言う2つ意味で)世界最高の雷計測の場所なのだ。