サイエンスメディアな日々   インフォグラフィクスな日々

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データの視覚化とインフォグラフィクス

http://en.wikipedia.org/wiki/Infographic

  • ニューヨークタイムズ日曜版一部に掲載されている情報量は、ルネサンス時代に一人の人間が一生かけて出会う情報量より多い。」(Richard Saul Wurman “Information Anxiety”)
  • Googleが把握しているURLリンクの数は1兆個を越えた。(Google公式ブログ 2008/7/25)
  • 2006年に作成もしくは複製されたデジタル情報量は、161エクサ( 1億6100万テラ)バイト。 これは、これまでに書かれた書籍の情報量合計の約300万倍にあたる。(米IDC調査)

これら「データに関する『データ』」が伝えるまでもなく、今、私たちは情報・データの洪水の中にいる。

インターネットを使えば誰もが瞬時に膨大なデータにアクセスできる。しかし、データにアクセスすることと、それらを理解・把握することは別の話だ。例えて言えば、「大きな金脈が見つかった。ここ一帯に多量の金があることはわかっている。しかし、掘り出した石をどうやってフルイにかけ、純度の高い金を取り出すのか?」…多くの人がこのような問題に日々直面しているのではないだろうか。

この作業には、コンピュータ・サイエンスや数学・統計学が中心的役割を果たすことは間違いない。
しかしコンピュータや数学だけでは不十分だ。他の様々な分野の知恵を集める必要がある。そのひとつが「視覚化=ビジュアリゼーション」であり、特にデータや情報の視覚化を扱う分野、「インフォメーション・グラフィクス」あるいは「インフォグラフィクス」と言う分野なのだ。

インフォグラフィクスとは、いわゆる図表やグラフを越え、様々な視覚化手法を駆使して、対象となる情報やデータをビジュアルに表現し、伝達するものだ。広い意味では古代の壁画や地図もインフォグラフィクスと言えるが、明確な分野としての創始者は、Charles Joseph Minard (1781-1870)だと言われている。

Minardは ナポレオンのモスクワ遠征のデータを視覚化 した。一枚の絵の中に、ナポレオン軍の経路、兵の数、気温、主要な川などが複合的に表現されているものだ。(特に「川」が描かれたのは、極寒の時期、川を渡る際に多くの死者が出たことを表すすため。)

Minardが画期的な「絵」を生み出してから1世紀以上が経ち、僕たちはコンピュータやネットワークと言う素晴らしい道具を手に入れた。インフォグラフィクスは単なる視覚化だけではなく、インタラクティブ性も取り入れた現代の道具として発展を続けている。

これらの道具と人間の創造力のコラボレーションによって、現代のインフォグラフィクスを創造する時代がいよいよやってきた。僕はそう思っている。

さて、目の前の広大な「金脈」をどこから掘っていこうか。そのためのツールは揃い始めている。

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