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シリアを取り巻く情勢を理解する:The Middle East, explained in one (sort of terrifying) chart

http://www.washingtonpost.com/blogs/worldviews/wp/2013/08/26/the-middle-east-explained-in-one-sort-of-terrifying-chart/

シリアでの化学兵器の使用が引き金となり、アメリカなどによるシリア空爆の可能性が高まっている。「イラク後」の中東情勢に、また新たな混乱が加わらないことを願うばかりだ。

今回の主役はシリアだが、元々中東の国々をめぐる関係は複雑だ。どの国とどの国がどういう関係にあるのかは、簡単には理解しにくい。


先日、エジプト人ブロガーが作ったというインフォグラフィクスが、ワシントン・ポストのウェブサイトに掲載されていた。'The Middle East, explained in one (sort of terrifying) chart [中東を一枚の(ある種恐ろしい)図で説明する]'と言うタイトルの通り、中東を巡る国々の支持・対立関係を可視化したものだ。

この図から、シリアのアサド政権を支持するのは、イラン・ロシア・レバノンシーア派などだとわかる。一方、トルコ・カタールアルカイダ、そしてアメリカは、アサド政権と対立関係にある。また、シリア反体制派を支援しているのは、サウジ等の湾岸諸国、レバノンのスンニ派、トルコ、アメリカなどだ。反アサドの国が、必ずしも反体制派を支持しているわけではないようだ。

中東の関係が複雑なのは、外から見れば同じイスラム教に見えても、スンナ(スンニ)派とシーア派は、まるで別の宗教のように対立関係にあるためだ。それぞれの宗派を支援する非イスラムの国々の思惑もからんで、単純に宗教の対立とも割り切れないことも、状況をさらに複雑にしている。

そう書きながら、正直に言うと、自分自身もまだよくわかっていない。ただ、中東を巡る関係が複雑に思えるのは、日本人だけではないようだ。アメリカ人の多くも、この地域のことをよく理解していないらしい。今回、エジプト人のブロガーが、ワシントン・ポストにこの図の掲載を許可したのも、アメリカ人に中東のことをもっと理解してほしい、との願いからだという。


注)このインフォグラフィクスでは、各国の関係は支持・対立に単純化されているが、支持・対立のどちらとも評価できない関係もある。例えば、イスラエルはアサド政権を支持していないことは明らかだが、シリア反体制派を支持していると言えるかは判断が別れる。中東を取り巻く状況はけっして一筋縄ではいかないことは理解しておく必要がある。僕たちが理解できないのも、けっして卑下する必要はないのだ。

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