瞬く間に普及した3Dプリンター。扱える材料はABSやPLAといった樹脂系だけでなく、金属を立体造形するものや、木材を使うものもある。しかし、ロンドン在住のデザイン科の学生、マルカス・カイザー(Markus Kayser )の発想はさらに先を行っている。彼が3Dプリンターの材料として眼をつけたのは、砂漠の砂。太陽熱をレンズで集光し、地面の砂にあてる。熱で溶けた砂を整形し、再び冷却すれば、ガラス製の作品ができるという計画だ。究極の「エコ・プロセス」と言える。
マルカスは、サハラ砂漠で実験を開始した。3Dプリンターのシステムは、4.5フィート=1.4メートルのレンズと、コンピュータと電気回路、太陽光パネルからなり、太陽の動きを追尾するフレーム上に設置されている。
ラップトップPCのCADモデルデータをもとに、砂箱の中の砂を太陽熱で溶かし、再び冷却するとガラス製品ができあがる。例えばガラス・ボールの試作には4時間以上かかり、形状もまだ完璧とは言えない。しかし、このユニークなアイデアの実現性を示すのには十分な成果だ、とマルカスは言う。もちろん、PCの電源も太陽電池から供給している。
原始時代と同じ工程を、最新のテクノロジーが新たな形で蘇らせる。これこそ、近未来のものづくりの姿なのかもしれない。