大げさな表現はないのに、何度も見たくなる映像というのがある。アップルのTV広告、'Misunderstood'もそのひとつになりそうだ。
ホリデーシーズン。久しぶりに実家に集うハリス家の人々。その中にひとりの少年がいる。多感な時期の少年らしく、少し斜に構えて、家族の輪を一歩外から眺めている。その手にiPhone5sを持ちながら。
夜、リビングルームに集う家族たち。少年はおもむろに自分が撮った映像を、Apple TVを通してテレビに流しはじめる。そこには、温かい家族の情景がとらえられていた。
少年の優しい眼差しに気づいたハリス家の人々。その絆はさらに深まっていく…。
アップルのホリデーシーズン向けの広告は、商品や言葉を全面に出さない。映し出さされる情景を見ているうちに、いつのまにかハリス家の一員になったかのように、心が温まっていくのを感じる。登場する家族や少年が愛おしくなる。
「ああ、こんな広告もいいな」と思う一方で、すべての情報発信は「広告」なのかもしれない。問題は、発信者がどれくらい広く、大きな視野を持ってそれを伝えているか、ということだと思う。売るのは商品ではない。人々が幸福になることが最高の商品であり、そのことを感じさせるのが最良の広告なのだろう。こういうのがUX(ユーザ・エクスペリエンス)じゃないかな、とアップルは控えめに、しかし確信を持って教えてくれているようだ。
もうやりつくしたと思う仕事でも、まだまだできることはある。そんな勇気をもらえる映像だと思う。
追伸:このTV広告の中に登場する映像’Harris Family Holiday'は、実際にiPhone5sで撮影されたものだそうだ。