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車輪も脚もない移動体:Super Ball Bot by NASA

NASAが開発中の惑星ローバー(地球外惑星に着陸、探査する移動体)”Super Ball Bot”は、従来の探査車とはまったく趣きを異にするものだ。棒と紐を組み合わせたその外観は、まるで手作りの工芸品のようで、形を変えながら移動する姿は新種の生き物のようにも見えてくる。

"Super Ball Bot"の筐体は、テンセグリティと呼ばれる構造を基にしている。テンセグリティとは張力(Tension)と統合(Integrity)をあわせた造語。バックミンスター・フラーが提唱した概念で、最小限の部材で構造を維持するそのアプローチは自然の中に見られる最適化や自己組織化とも重なる。

テンセグリティ構造の物体は、凹凸のある地面にも柔軟に形を変えて対応し「走行」することができる。ぎこちなく動いているように見えるが、中心においたペイロードは常に同じ位置に保たれ、乗り物としての機能も果たしている。

http://www.dvice.com/2013-12-26/nasas-tensegrity-ball-robot-can-bounce-its-way-across-planets

陸上の移動には車輪が必要、という従来の固定観念を取り払った発想は、必要な強度を維持しながらぎりぎりの軽量化が求められる「ロケットサイエンス」ならではの視点だ。宇宙開発分野の科学者・技術者は、広い知識と経験を備えつつ、同時に常識にとらわれない柔軟な視点や思考を持っている。まさに、スーパー・サイエンティスト、スーパー・エンジニアたちなのだ。

しかし、NASAの頭脳がようやく実現できた斬新なアイデアを半世紀も前に提唱したバックミンスター・フラーは、どれほどの天才なのだろう!

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