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市民はどんな未来を予想しているのか:U.S. Views of Technology and the Future

http://www.pewinternet.org/2014/04/17/us-views-of-technology-and-the-future/#utm_source=feedly&utm_reader=feedly&utm_medium=rss&utm_campaign=technology-and-science-in-the-future

市民がどのよう未来像をもっているかは、社会にとって非常に重要なことだ。未来は「やってくる」のではなく、自分たちで「創る」のであって、その担い手は言うまでもなく現在の人々、すなわち私たち自身だからだ。人々の今の思いを知れば、ある程度未来を予測できる。

米ピュー・リサーチ・センターとスミソニアン・マガジンが共同で行った「テクノロジーと未来に関する意識調査」は、近未来から何十年も先の世界まで、市民の持つ未来像を調査したレポートだ。米国市民がサイエンスやテクノロジーをどのように感じ、未来をどう見ているかを明らかにしてくれる。


レポートは、米国民の半数以上はこれからの半世紀について楽観的で、科学技術は生活や社会を改善していくと期待しているが、分野によっては限界も感じている、述べている。

10人中8人(81%)は、これから50年以内に実験室で作られた臓器の移植が可能になり、約半数(51%)はコンピューターが人間と区別できないアート作品を創ることができると思っている。一方、これからの50年で科学が達成できることへの限界も感じている。物体のテレポート技術が開発されると考えているのは、全体の半数に満たない(39%)。また、人類が地球外の惑星に移住すると予想しているのは、3人に1人(33%)だ。さらに気象をコントロールできるようになると思う割合は19%にすぎず、地球環境に関する技術開発は困難だと感じているようだ。


市民の関心が高い分野は、1)飛行自動車や民間ロケットなどの移動手段、2)タイム・トラベル、3)健康改善・長寿命化・重病の治療、となっている(これらは記述式調査によるもの)。
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一方、科学技術の発展が弊害を招き、未来社会は今よりも悪化すると考える人々が多い分野もある。次のような事例があげられている。

より賢く、健康で、運動神経の良い子どもを生むために、DNAを改変すること(「改悪」と考える割合は66%)
ロボットが、高齢者や障がい者の主要な介護手段となること(同65%)
民間ドローンの飛行が解禁されること(同63%)
インプラント型の情報デバイスを埋め込むこと。(同53%、特に女性に懸念が多い)

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同レポートはまた、新しい技術を積極的には受け入れたくないという人が増加している、と指摘している。その事例としては、「自動運転車に乗りたいか?(Yes48%に対し、No50%)」、「記憶力を向上する脳インプラントを受けるか(Yes26%に対しNo72%)」、「実験室で作られた人工肉を食べるか?(Yesは20%しかない)」などがある。
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個人の属性による科学技術や未来に対する考え方に違いも調査されている。下の表は科学技術を肯定する割合を、性別・年齢・年収にまとめたもの。全体的に言えば「高学歴」「高収入」「男性」ほど、未来に対して楽観的なようだ。

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この手の調査は質問の内容や方法に少なからず影響をうけることを考慮しても、科学技術が単純に「バラ色の未来」を与えてくれると多数の市民は思っていないこと、その一方で、現在人類が抱えている問題を解決し、より良い社会を作るためには科学技術の力は必須だ感じていること(希望している、というべきかもしれない)。それが、この調査から感じたことだ。

もし間違った道を選択すれば、人類が未来を迎えることができなくなる時がくるかもしれない。未来の担い手は、科学者や技術者だけでなく、私たち市民なのだと言うことを、一人一人が真剣に考えるべき時代にすでに入っているのかもしれない。それが僕の希望する近未来像だ。

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