鶏(にわとり)のための、ヴァーチャル・リアリティ。
「セカンド・ライブストック」は、ヘッドマウントディスプレイとソーシャル・アプリを使って、養鶏場で飼われる鶏たちに、ヴァーチャルな自由世界を与えようと言うものだ。鶏たちに見えるのは、「セカンドライフ」のようなヴァーチャル空間。床は全方向に動くトレッドミルになっていて、鶏は、広々とした野原を好きな方向に動きまわることができる。そして「セカンド・ライブストック」に参加する他の鶏たちと出会い、会話(鶏に言葉があれば、だが)することもできる。
「セカンド・ライブストック」が、どこまで実現されているのかは定かではない。ウェブサイト上で提案されたのは2年前で、その後も研究は進められているようだ。提案者であるデザイナー、オースティン・スチュワートは、プロジェクトの目的をこう語る。
(家畜にとって)何が一番良いのか、人間は何をするべきかという疑問を提示すること、それがこのプロジェクトの目的です。そして、それは、私たち自身の問題でもあります。私たちも鶏たちとおなじように、小さな箱の中でで暮らしているのです。
オースティンの提案を、「悪いジョークだ」といって、無視することは簡単だ。しかし、身動きも取れないせまい空間で一生を終える鶏たちにとって、「セカンド・ライブストック」は、少しでも「鶏らしい一生」を送らせてあげる手段なのかもしれない。そして、オースティンがいうように、僕たち人間は今、自らの手で「にわとり化」にむかっているのかもしれない。
オースティンは、映画「マトリックス」の主人公、ネオかもしれないのだ。