とんでもない質問に、科学と数学(と漫画と体力?)を駆使して、超まじめに回答する本、'What If'。その著者で、ギークたちの圧倒的な支持を得る漫画家(であり、元研究者)が、ランドール・マンローだ。彼のTEDトークには、'What If'の雰囲気がそのまま漂っている。
トークでは次の2つの質問と、彼の回答が紹介される。
- ピッチャーが、光速の90%で投げたボールを打ち返したらどうなる?
- すべてのデータをパンチカードに記録したら、グーグルの倉庫はどれくらいの大きさになる?
どちらの質問もぶっ飛んでるが、回答はさらにぶっ飛んでる。よくいえば「現代版フェルミ推定」、サブカル風に言えば「米国版『柳田理科雄』」だろうか。(注:フェルミ推定も柳田理科雄も知らなくても、たぶん問題ありません。知っている時点ですでにギークの仲間なので、こんなたとえも不要でしょうから(笑))
最初は「ばかげた質問に何をまじめに答えてるの!」と思うのだが、聞いているうちに「大胆な仮定と論理的な思考」に思わず拍手を送りたくなってしまう。
さて、上の質問の「回答」はマンローのTEDトークを見てもらうとして、マンローの発想はもちろん洒落ているのだけど、マンローの2番目の回答へのグーグル(のエンジニア?)のレスポンスも洒落ている(どんなレスポンスなのかもまた、TEDトークをみてください)。
マンローとグーグル(のエンジニア?)に共通するのは、「一見ばかげたことを、面白いと感じ、真剣に考える能力」だ。それは、ハイ・クオリティな「ウィット」といえるかもしれない。
実は、クリエイティブネスやイノベーション・マインドの源泉は、この手の「ウィット」にあるんじゃないだろうか。知識や経験、ビジネスマインドといったものも大切なんだろうけど、「誰もやっていないことをやる」ことが求められる未来の仕事は、それだけじゃ不十分だ。
アントレプレナーに求められるのは「斬新なアイデアを、さまざまな手を使って実現する」こと。それは、まさに'What If'と同じ姿勢であり、そのスターティング・ポイントは、マンローやグーグル(のエンジニア?)がもっているような「ウィット」だと思うのだ。
ばかげた質問を考えて、真剣に解答を探してみること。常に'What If'と問うてみること。これって、最高のイノベーション・マインドなんじゃないかな。