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人に優しいジェスチャーセンサー:"Obake" by M.I.T. Media Lab.

http://dhairyadand.com/sec/?projects=obake
M.I.T.メディアラボのDhairya DandとRob Hemsleyが開発した"Obake"は、「人にやさしい」ジェスチャー・インターフェースだ。

スクリーンをつまんで引っ張ったり、指で押したり、こすったりすると、スクリーンの変形に追随して投影される映像も変化していく。引っ張りあげながら一部を押す、両手で持ち上げる、2箇所を引っ張ってつなげる、といった複合的な、しかし人にとっては自然な動作で操作することができる。

一見、突拍子もなく見える"Obake"の最大の目的は、特別な操作方法を覚えなくても、私たち人間が自然に行なっている動作(ジェスチャー)で操作が可能なインターフェースを実現することなのだ。
ちなみに"Obake"は、変幻自在に形を変える「お化け」から名付けたという。

http://dhairyadand.com/sec/?projects=obake
http://dhairyadand.com/sec/?projects=obake


今までマウスで行なってきたポインティングやドラッグ・クリック、と言った操作は、タッチセンサーの登場によって、タッチ・ドラッグ・タップになろうとしている。しかし、それらは単に2Dのマウス操作を置き換えただけにすぎない。
これは、技術上の問題のためだけではない。より大きな問題は、私たちユーザーの「慣れ」なのだ。

例えば、テキストを入力するインターフェースとして、キーボードは世界中に広く行き渡った。(コンピュータよりはるか前、タイプライターの時代からの歴史を持つ)。もし、キーボードより効率的な入力インターフェースが開発されたとしても、もしQWERTY配列よりも効率的に入力できる配列を作ったしても、新しいインターフェースを受け入れるには、人々の巨大な「慣性」に逆らわなければならない。

そこで、"Obake"は、人々が普段行なっている動作で入力できること、を基本思想とした。それが、つまむ、押す、こする、と言うジェスチャーの採用につながっている。

もちろん、"Obake"のインターフェースが人々に受け入れられるには、さらに洗練された操作性、小型化や価格・耐久性などの課題も解決しなければならないだろう。しかし、このような新しい「芽」が出始めていることを知っておかなければならないと思う。そういう「芽」のいくつが成長し、やがて大木になるのは間違いないからだ。

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