サイエンスメディアな日々   インフォグラフィクスな日々

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政治の腐敗は、国民の暮らしを悪化させる

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かなり古い記事だが、2011年のThe Economistに、「"Corrosive corruption - A correlation between corruption and development"(腐敗による没落〜腐敗と発展の相関関係)」という記事がある。世界各国の政治的腐敗の程度と、国民の生活の質との関係を調査したものだ。


その結果は、上手の通り。横軸に腐敗認識指数(CPI)、縦軸に人間開発指数HDI)を取ってまとめられている。

横軸のCPIは、その国・地域の公的機関の腐敗がどれだけ認識されているかを示す指数、つまり、公的機関の「クリーン度」を表す指数で、数値が大きいほど腐敗が少ないことを示す。

一方、縦軸のHDIは、国連による健康、財産、教育の充実度を測る指数。大きいほど国民の生活の質が高いと言える。


このグラフから、CPIが低い国はHDIのバラ付きが大きいものの、CPIが4(40)以上の国・地域は、大きな傾向として、腐敗のない国ほど人間の成熟度は高いと言えそうだ。

CPIが高い国は概ね先進国だが、その中でもイタリアやギリシャはCPIが低い、すなわち、腐敗が広がっている。



ところで、最新、2016年のCPI値はこちらに公開されている。日本は、2011年の85から、2012年に74に急落し、その後も75近辺を推移し、直近の2016年には72まで落ちている。

2017年のCPIは年明けに発表される。今年、政治と金をめぐる話題に事欠かなかった日本。2017年のCPIはいったいどうなっているのか、楽しみでもあり、恐ろしくもある。

JSTサイエンス・ニュースに関わってきて

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2011年度から続いてきた、科学技術振興機構JST)のサイエンス・ニュースが、昨年度で終了となった。サイエンス・ニュースは科学技術振興機構JST)が企画・運営する、ネット配信の科学ニュースで、科学技術の最先端の動向や、科学技術と社会の関わりにある話題を、5分間の動画として配信しているもの。

サイエンスニュース|サイエンス チャンネル


制作会社としてプロジェクトの最初から関わらせてもらい、公正な企画入札なので(!)毎回受注できたわけではないのだが、数えてみると、今まで70本以上のサイエンス・ニュースを制作してきた。

制作したニュースを今あらためて見ると、「こんな取材をすればよかった」とか「こんな表現にすればよかった」とか「もっとわかりやすくできたのに」とか、未熟・稚拙な部分ばかり気になってしまう。一方で、5分間という制約条件の下で、科学技術と社会の交差点にあるトピックスを、ある程度先取りして紹介できたのではないかな、と思う。

なにより、JSTの取材ということで、普段は会えない研究者にたくさんお会いでき、直接話しを聞けたことが一番の財産。

実のところ、ある期間、毎月数本の企画・取材・編集をこなさねばならないサイエンス・ニュースは、うちのような零細会社にとっては、かなり荷が重いプロジェクトだった。(サイエンス・ニュースをやっている期間は、他の仕事があまりできない!)

逆に言うと、そんなことも知りながら、あえて小さな会社にも制作させてくれたJSTと、細かくアドバイスいただいたサイエンスニュースの編集長・スタッフに感謝しています。

サイエンス・ニュースのようなプロジェクトが、いつかまた復活することを。




※制作したサイエンス・ニュースの中から、まったく個人的にベスト5を選んでみた。どうだろうか?

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番外:

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可視化ツールのまとめサイト:dataviz.tools

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可視化ツールには様々なものがあるが、数が多すぎて、どれをつかえばいいのか迷ってしまう。結局は知っているものを(多少無理して)使うことになる。本当はもっと便利で、もっと適したツールがあるんじゃないかな、と思いながら。

そんな状況を変えてくれそうなのが、可視化ツールのまとめサイトdataviz.toolsだ。"Analysis", "Color"など、カテゴリーごとに有用なサイトがリストアップされている。

しかも、dataviz.toolsのリストは「成長」していくようだ。ユーザーが、"Suggest a Tool"から、おすすめの可視化ツールを推薦することで、実際に可視化に携わっている人々の間で情報を共有できるしくみがいい。

可視化ツールを可視化したサイト、dataviz.toolsを、ブックマークしておこう。

VRが変える情報伝達とものづくりの未来

www.slideshare.net

昨年は、思いがけずVR(ヴァーチャル・リアリティ)について話す機会に恵まれた。

正確に言うと、話す機会はもらったが、「VR」というテーマは、こちらから提案した。講演の主催者から「何について話しますか?」と聞かれて、「ヴァーチャル・リアリティについて話したいです」と僕は即答した。


昨年から話題に上がることがおおくなったVRだが、日本ではまだVRについて過小評価されていると思う。海外、特に米国では、FacebookGoogleが大々的に取り組んでいることからもわかるように、VRは今、もっともホットなテクノロジーの一つだ。おそらく、VRはAIと並んで、21世紀初頭を牽引する2大テクノロジーの片輪になるだろう。

VRについては、一般の人々の間には少々誤解があるように思う。

VRは、ゲームやエンターテイメントだけのものではない。また、VRは「おたくが狭い部屋で一人の世界に没入する」ためのものでもない。

VRはそのような、「今年の流行」として、一瞬話題に登ってやがて消えるような小さなテクノロジーではない。もっと大きな、社会基盤と言えるほどの巨大なテクノロジーになる可能性があるのだ。


VRは、プライベートな営みから仕事、公共システムまで、僕たちに生活のあらゆるものに関わる、21世紀のインフラになるだろう。

VRは、ネットワークで互いに結ばれ、人々が自身の経験を蓄積、共有する巨大なメディアになるだろう。


今は、まだSFのような、おぼろげなイメージしかないかもしれない。しかし、5年後、10年後に振り返った時、おそらく今が、「VR革命」の狼煙が上がった時代として歴史に記録されるのではないだろうか。


僕がVRについて話したい、と思ったのは、そんな予感に突き動かされたからではないだろうか。


※講演資料は先日SlideShareに公開したので、眺めてもらえればうれしい。

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2017年、VRの可能性:10の予測

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昨年は、VR(バーチャルリアリティ)に「はまった」一年だった。

コンピュータ・グラフィクスとヴィジュアル・プログラミング、そして立体映像に携わる中で、VRへの到達は必然の流れだったのかもしれないが、昨今感じるVRの可能性は、人類の情報伝達に関する不連続なパラダイムの変革を予感させるほど巨大なインパクトを感じる。自分にとっては、おそらく10年に一度の「ビッグ・ウェーブ」だし、すべての人類にとってもそうなると確信している。


そう思っているのは僕だけじゃないよ、ということを客観的に示すために、10 predictions and opportunities for virtual and augmented reality in 2017 | VentureBeat | AR/VR | by Jacob Mullinsという記事から、2017年のVR/ARについての10の予測を引用しておく(正確には、6つの予測と、4つの願望、だが。)


6つの予測

#1: アップルが、iPhone8でARゲームに参入

#2: スナップチャットが、'Spectacles'をベースにした拡張現実プラットフォーム開発のロードマップを公表


#3: HTC Vive 、「スタンドアロン版」VRヘッドセットを発表

#4: フェイスブック、VR事業を拡大。Oculusブランドは縮小。

#5: VRヘッドセットは、「ケーブルレス」、ワイヤレス化が進む。

#6: WebVRが、フルスケールVRとモバイルVRとの橋渡し役を担う。



4つの願望

#1: より「創造」のためのツールになる

#2: より自然なソーシャル・インタラクションが実現

#3: 「マジックウィンドウ(VR/ARの中の仮想ウィンドウ)」の普及

#4: 新しいマネタイゼーションの方法がうまれる


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それぞれの予測、願望の詳細は元記事を見ていただきたい。僕は理にかなった意見だと思う。言い換えれば、(VRの普及に大きな期待を抱いている僕にとって)どちらかというと「想定内の」「保守的な」意見だと感じるほどだ。


バーチャルリアリティは、リアリティになる。それが、2017年のVRについての、僕の予測だ。

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