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可視化の知識を整理する〜"Designing Data Visualizations"

http://shop.oreilly.com/product/0636920022060.do
Amazonで注文していた"Designing Data Visualizations"が届いた。可視化・視覚化が重要になっている一方で、その全体像を体系的に書いた本は意外に少なく、特にインフォグラフィクスなど比較的新しい用語や概念をカバーした書籍は見つけられていなかった。今回、タイトルに"Designing"とあるところにひかれこの本を注文したが、期待に応えてくれそうな予感がする。
"Designing Data Visulizaitons"は、タイトルの通り、ビジュアリゼーションをどのように「設計」するかについての体系的な知識を与えてくれる。他の書籍でよく扱われている個別のスキルや具体的事例ではなく、可視化にはどのような要素があり、各要素はどんな効果があるか、と言った、可視化への素朴な、でも根源的な疑問に答えてくれる、教科書か入門書と言えるだろう。
まだ途中までしか読んでいないが、例えば第一章、"Classifications of Visualizations"では、そもそもビジュアリゼーションに明確な分類はないと断った上で(それについては以前のブログで、ビジュアリゼーションに関する言葉にはまだ統一見解はないことを書いた)、いくつかの分類を試みている。
例えば、ビジュアリゼーションには2つの「目的」、すなわち、探索(Exploration)と説明(Explanation)がある、と言う見方は面白い。ビジュアリゼーションは、あるデータセットから何か新しい知見を見つけ出す(探索)ためのツールとしても、ある結論や方向性を第三者に理解・同意(説明)させるためのツールとしても使われるのだ。また、「データ」ー「デザイナー」ー「ユーザー(リーダー)」による「三位一体」説は、ビジュアリゼーションに関与する人の相互関係で、生成物の特性が変わると言う視点。ビジュアリゼーションは、データとユーザーの間では情報的(Informative)に、デザイナーとユーザーの間では説得的(Persuasive)、データとデザイナーの間は視覚アート(Visual Art)になる。

普段、スキルのレベルでの知識やノウハウに近いものばかり吸収しているので、どうも知識が断片的で整理されていないように思っていた。こういう全体を俯瞰する良書に接することで、頭の中でごちゃごちゃに置かれたものが、引き出しにきれいに収まるような感じがして、心地よい。
これも一種の「可視化」、かもしれない。

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