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「ボロノイ図」によるスーパーヨット〜 "Voronoi"

http://edition.cnn.com/2011/TECH/innovation/06/10/voronoi.concept.yacht/
数学に触発されたデザインは珍しくありませんが、これほどエキセントリックなものはなかなかお目にかかれません。
"Voronoi"は全長125mの「スーパーヨット」。韓国のインダストリアル・デザイナー、キム・ヒュンソクによるこの船は、その名前が示すとおり、ロシアの数学者ゲオルギ・ボロノイの、有名な「ボロノイ図」を応用してデザインされています。
ボロノイ図とは、ある領域に任意の複数の点が与えられた時、その領域をもっとも近い点で領域分けすることで作られるパターン。理論はともかく、ボロノイ図が広く知られている理由は、トンボのハネや熱帯魚の模様、植物の細胞、サンゴの形状など、自然界で見られるパターンとよく一致するためです。

"Voronoi"で、まず目を奪われるのが船の上面全体を覆う巨大な「白い網」。ボロノイ図による網目模様は、まだ見ぬ未来の有機体のようです。甲板や室内に落ちるボロノイ図の影は、船の進行と組み合わさることで、「擬似的な自然界」のイメージを創りだしてくれるでしょう。

非常にユニークなスーパーヨット"Voronoi"ですが、まだコンセプトの段階で実際に作られるかどうかは未定のようです。現実問題として、ランダムなボロノイパターンの構造物は、強度はもちろん製造コスト面でも実現性の検討が必要でしょう。
しかし、今、様々な分野で「自然に学ぶ」姿勢が生まれつつあることもまた事実で、キム・ヒュンソクの「とんがったアイデア」も、意外に早く実現するかもしれません。

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