災害現場では「72時間の壁」と呼ばれる目安がある。早く救助するほど、人命を救える確率は上がるという事実を表現した言葉だ。しかし、瓦礫や土砂に覆われ、救援部隊の行動も妨げる災害現場では、人命探索は困難な作業になる。精度と効率を上げる方法や機器が、強く求められている。
そんな災害現場での人命救助を改善すると期待されているのが、NASAジェット推進研究所らの研究グループが開発した'FINDER'だ。FINDERの原理は、マイクロ波レーダーを瓦礫の中に照射し、その反射波を分析することで生存している人を識別するというものだ。原理自体は新しいものではないが、FINDERは、災害現場で高い精度を発揮できるよう工夫されている。実験では、約10メートルの厚さのがれきの下の人命を識別できたという。それを可能にしているのが、瓦礫の中で複雑に乱反射したマイクロ波のノイズから人体の微妙な動きだけを識別できる、データ処理のアルゴリズム。心臓の鼓動をも見分けることができ、まだ生存している人を発見する確率を向上した。
FINDERのもうひとつの特長は、コンパクトで使いやすいこと。本体は片手で運べるほど小さく、タブレット型端末で操作する。初期のレーダー装置と比べると、「スーパーコンピュータとiPhoneくらいの違いがある」という。操作も簡単で、5分間で操作できるようになるという。
FINDERは、犬やマイクロフォンなどの現在の捜索方法と組み合わせ、それぞれの特長を活かすことで、より高い精度で捜索を行うことが期待されている。
【出典】