考古学というと、地面を少しずつ丁寧に掘りながら遺物を見つけ、そこから過去を推測する学問というイメージが強い。大学時代、考古学を専攻する友人がいたが、ある遺跡に何日間も滞在し、朝から晩まで土を掘る作業を行っていた。日に焼けて真っ黒な姿は、研究者というより工事現場の労働者風だった。考古学研究が与えてくれるロマンは壮大だが、その作業はかなり地味だと思った。
そんな考古学の手法を変えるかもしれないのが、宇宙考古学(Space Archaeology)(*)という分野。人工衛星や航空機から撮影した地形の画像から、過去の営みを探ろうという新しい研究手法だ。
宇宙考古学の先駆者、アラバマ大学のサラ・パーカックは言う。「私たちがまだ見つけていないものは膨大にあります。考古学の対象となる場所のうち、人類が今まで発掘したものは1%にも満たないのです。」
パーカックは人工衛星の赤外線画像を分析して、17のピラミッドが埋もれている可能性のある場所、3000の住居跡、1000の墓地を発見した。これだけの遺跡を従来のフィールドワークで発見するには膨大な労力が必要だろう。宇宙考古学は、文字通り「鳥の目(バード・アイ)」によって、人類の営みの痕跡に目星をつける作業を、大幅に効率化してくれる。
「地上から見るだけでは何もわかりません。泥土がすべてを覆い隠していますから。」しかし、衛星から撮影された画像を処理すれば、そこに様々な痕跡が現れる。パーカックが発見した住居跡の一つは、ナイルデルタにあった3000年前のエジプトの首都タニスと考えられている。
(*) Space Arahaeologyの正式な邦訳はまだないようなので、ここでは仮に「宇宙考古学」と訳した。Satellite Archaeology(衛星考古学)とも呼ばれることもある。
【参考】
TEDトーク:サラ・パーカック「宇宙から見た考古学」
BBC Future:Hunting lost cities from space