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クアッドコプターで夜空にアートを描く:Spaxels Light Painting from Ars Electronica

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クアッドコプターを自在に操って、夜空に絵を描く。そんな技術的にも表現的にも最先端を行くアート・パフォーマンスを展開するクリエーター集団がある。チームの名前、そして彼らがあやつるクアッドコプターは、'Spaxels'と呼ばれている。

Spaxelsはプログラム可能なLEDシステムを搭載したクアッドコプターだ。編隊で飛行し、夜空に立体的な図形を描き出す。この表現を実現できるのは、今のところ、アルス・エレクトロニカのフューチャーラボだけだ。

 

Spaxelsチームによるパフォーマンスは、2012年から世界各地で行われている。たとえば次のようなものだ。

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SHARJAH 2014 / Islamic Capital of Culture Opening

 

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European Capital of Culture Opening, 2014

 

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Ars Electronica Opening, 2013

 

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Startreck Into the Darkness Promotion, 2013

 

 

中でも特に興味深いのが、長時間露光撮影と組み合わせたパフォーマンス。クアッドコプターの軌跡が、夜空に文字や図形を浮かび上がらせる。

 

Spaxelsという名称は、Space(空間)+Pixels(ピクセル=画素)から作られた。空間を3次元ディスプレイのように使いたいという発想から生まれたコンセプトだ。これを実現するために、クアッドコプターの編隊飛行を制御するソフトウェアやLEDシステムは独自に開発された。

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開発するのは、アルス・エレクトロニカ・フューチャーラボに拠点を置くクリエーター・チーム。3Dアニメーション、プログラミング、LED開発、そしてビジネスまで、さまざまな専門家が集まっている。 

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Spaxelsのターゲットはアートだけではない。たとえば、災害時の警報システムとして、あるいは、自転車レースやマラソンで選手に状況を伝えるために使えるだろう、とチームは考えている。

5歳からロボット・プログラミングを楽しめるキュートな教材:Dash & Dot by Wonder Workshop

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こんなおもちゃが子供の頃にあったら!

一目見てそう思わずにいられないのが、米国のベンチャー・Wonder Workshopが開発したプログラマブル・ロボット、DashとDotだ。「一つ目小僧」のような、キュートな(?)ボディをもつこのロボット、実は本格的なロボット・プログラミングの教材になっている。

 

かわいい球体をしたDotは、マイクロフォン、スピーカー、複数のLEDライトが装備されている。一方、より大型のDashは、Dotに移動機能を加えたロボット。3つの距離センサーを持ち、マイクフォロンも3基搭載。ヘッド部分も可動式だ。

 

Dash/Dotのプログラミングは、iPadAndroidを搭載したモバイル機器上で直感的に行える。プログラミング言語をタイプしなくても、機能を示す「ブロック」をタッチスクリーン上でつなぐことで、ロボットに指示を与えるプログラムが完成する。5歳児から大人まで、プログラミングを楽しめるよう工夫されたインターフェースだ。

 

Dash/Dotは、Wonder Workshopのオンラインショップでプレ・オーダーを受付中。Dash/Dot単体は、今ならそれぞれ169ドル/59ドルで購入できる。Dash/Dotのセットや、シロフォンなどのアクセサリーも用意されている。配送は2015年1月の予定。

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ほんものの手作り地図:Hand Drawn Maps by Jenni Sparks

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イラストレーター、ジェニー・スパークスの地図は「100%手書き」。何十年も前なら「普通」の手法だったかもしれないが、コンピュータ・グラフィクスが「普通」となった現代では、かなり斬新に思える。

 

ジェニーの制作手法のユニークさは「手書き」だけではない。ビルの形状やテキスト情報は、彼女が実際に街を歩き、自分の目で見、肌で感じ、時に地元の人に「何が重要だと思うか」を尋ねながら、自分自身で情報を集めたものだ。マスコミやインターネットにたよらないその手法は、ジェニーの手書き地図の背後に、人間の営みの深さ、尊さを与えているように思える。

 

これまでジェニーが描いた地図は、ロンドン、サンフランシスコ、ベルリン、ニューヨークの4種類。すべて、 オンラインショップで購入することができる。

未来のショッピング:Tomorrow's cities - future of shopping by BBC

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英国BBCの記事、'Tomorrow's cities - future of shopping(明日の都市ー未来のショッピング)'は、近未来のショッピングの姿を可視化したもの。そこに描かれた数々のシーンは、けっして空想や願望ではなく、現在開発中のテクノロジーをもとにした、現実的な「未来予想図」だ。

 

  • 生体認証による支払い
    フランスのスーパーマーケットAuchanとDIYショップ Leroy Merlinは、指紋認証による支払いを実験的に行なっている。顧客は指紋データを格納したNFC通信機能付きカード を持ち、照合を行って不正を防止する。

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  • バーチャル・ストア
    実際の商品を置くスペースがなくても、大型のタッチスクリーンさえあれば、膨大な商品を陳列することが可能になる。
    Tescoは韓国の地下鉄構内に、リアルな陳列棚を模擬した日用品のバーチャルショップを開設した。通勤途中の顧客は、モバイルフォンを使って商品をスキャンし、注文する。帰宅する頃には商品が届けられる。

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  • 顔(表情)認識

    サンディエゴの企業Emotientは、顧客が店に出入りする際の表情や、異なった包装やブランドに対する反応を取得し、顧客の「気持ち」を分析している。
    Tescoは顔認識技術を使って、性別・年齢別のターゲット広告を表示するアプリを開発した。ちなみに、このアプリは、テクノロジーがどこまで人々の生活に入り込むのを許すか、という議論を引き起こした。

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  • スマートラベル
    スマートラベルのコストは急激に下がり、Norwegian Thinfilmなど多くの企業が導入しはじめている。スマートラベルには、センサー・ディスプレイ・無線(NFC)が組み込まれ、商品がどれくらい新鮮か、国際規格へ適合しているか、などを顧客に教えてくれる。
    未来の商品陳列棚には多数のセンサーが設置され、顧客のかごに入っている食材を分析してどのワインがもっとも適しているかを教えてくれたり、アレルギーをもつ顧客に警告を出したりしてくれるようになるだろう。

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  • オンデマンド配送
    オンラインで購入した商品をコンビニや駅で商品を受け取る「クリック&コレクト」は近々広く利用されるだろう。WunWunはモバイルで購入した商品を1時間以内に届けるサービスを提供している。
    Amazonはドローンを使った宅配サービスを開発中で、すでにFAA(連邦航空局)の認証も取得している。

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  • アシスタント・ロボット
    韓国のショッピングセンターには、店舗の案内をしてくれるロボットが導入されている。将来は、商品を棚に並べたり、商品の鮮度や在庫をチェックしたりすることで、ロボットはその真価を発揮するだろう。
    カーネギーメロン大学が開発したAndyvisionは、商品だなをスキャンして商品のリアルタイムマップを作成し、店頭の商品がなくなったり、在庫が少なくなれば、アラートを出して教えてくれる。

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  • 3Dプリント・ショップ
    タッチスクリーンを使って欲しい商品のデザインデータをダウンロードし、しばらく待つと実際の商品ができあがる。そんな3Dプリントショップが現実になるだろう。
    ワーウィック大学のギボンズ博士は、現在の印刷店は将来3Dプリントショップに置き換わると予想する。あるいは、未来の3Dプリントショップは、昔の公衆電話ボックスのようなものになるという専門家もいる。

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 なお、すべての人々がハイテクな未来を予想しているわけではない。学者Laura Vaughanは、こんな「未来のショッピング」の姿を予想している。

  • バック・トゥ・ザ・フューチャー(過去へ戻る未来)
    未来のメインストリートには、肉屋、パン屋、農家の直売店など、懐かしい店々が戻ってくるだろう。オンライン競争の中で失われた人と人のやり取りを求める人々が、再び街に集うだろう。

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オンラインショップでの購入が日常になり、従来の「リアル店舗」の多くは、苦しいビジネスを強いられている。そんな中、バーチャルとリアルーーーーーそういう分け方自体がすでに古いかもしれないがーーーーーを融合した新しいビジネスも生まれようとしている。テクノロジーと対峙するのではなく、テクノロジーを積極的に取り込みながら、人間本来の趣き・温かみも加えたあたらしいアプローチ。現在のオンラインショップにはない、ある種の豊かさを与えてくれるような未来のショッピングに期待したい。

 

ダンスする信号:The Dancing Traffic Light

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何の変哲もない赤信号。そこに表示されている人のアイコンが、突然ダンスをはじめる…!?そんなユニークな信号が、この夏、リスボンの街に現れた。

 

「ダンスする信号」- "The Dancing Traffic Light"は、赤信号の「止まれ」を示す人のアイコンがダンスするもの。しかし、ただ、アイコンをアニメーションにしただけではない。この「ダンスするアイコン」、実は、別の場所で実際にダンスしている人を撮影したものなのだ。


The Dancing Traffic Light - YouTube

 

「ダンサー」は、iPadで自分の好きなジャンルの曲を選んで踊る。人によって踊り方はさまざま。毎回違うダンスが見られる信号なら、横断歩道の前で待たされても、いらいらしないだろう。

 

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信号機という誰もが知っている社会インフラが、人と人をつなぐデバイスに変わる。キュートな「アソビゴコロ」あふれる"The Dancing Traffic Light"は、既存のモノを活かして、人と人をつなぐ実験。そこには、未来へのヒントがある。

 

※Making映像はこちら!


Making Of: The Dancing Traffic Light - YouTube

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