英国BBCの記事、'Tomorrow's cities - future of shopping(明日の都市ー未来のショッピング)'は、近未来のショッピングの姿を可視化したもの。そこに描かれた数々のシーンは、けっして空想や願望ではなく、現在開発中のテクノロジーをもとにした、現実的な「未来予想図」だ。
- 生体認証による支払い
フランスのスーパーマーケットAuchanとDIYショップ Leroy Merlinは、指紋認証による支払いを実験的に行なっている。顧客は指紋データを格納したNFC通信機能付きカード を持ち、照合を行って不正を防止する。
- バーチャル・ストア
実際の商品を置くスペースがなくても、大型のタッチスクリーンさえあれば、膨大な商品を陳列することが可能になる。
Tescoは韓国の地下鉄構内に、リアルな陳列棚を模擬した日用品のバーチャルショップを開設した。通勤途中の顧客は、モバイルフォンを使って商品をスキャンし、注文する。帰宅する頃には商品が届けられる。
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顔(表情)認識
サンディエゴの企業Emotientは、顧客が店に出入りする際の表情や、異なった包装やブランドに対する反応を取得し、顧客の「気持ち」を分析している。
Tescoは顔認識技術を使って、性別・年齢別のターゲット広告を表示するアプリを開発した。ちなみに、このアプリは、テクノロジーがどこまで人々の生活に入り込むのを許すか、という議論を引き起こした。
- スマートラベル
スマートラベルのコストは急激に下がり、Norwegian Thinfilmなど多くの企業が導入しはじめている。スマートラベルには、センサー・ディスプレイ・無線(NFC)が組み込まれ、商品がどれくらい新鮮か、国際規格へ適合しているか、などを顧客に教えてくれる。
未来の商品陳列棚には多数のセンサーが設置され、顧客のかごに入っている食材を分析してどのワインがもっとも適しているかを教えてくれたり、アレルギーをもつ顧客に警告を出したりしてくれるようになるだろう。
- オンデマンド配送
オンラインで購入した商品をコンビニや駅で商品を受け取る「クリック&コレクト」は近々広く利用されるだろう。WunWunはモバイルで購入した商品を1時間以内に届けるサービスを提供している。
Amazonはドローンを使った宅配サービスを開発中で、すでにFAA(連邦航空局)の認証も取得している。
- アシスタント・ロボット
韓国のショッピングセンターには、店舗の案内をしてくれるロボットが導入されている。将来は、商品を棚に並べたり、商品の鮮度や在庫をチェックしたりすることで、ロボットはその真価を発揮するだろう。
カーネギーメロン大学が開発したAndyvisionは、商品だなをスキャンして商品のリアルタイムマップを作成し、店頭の商品がなくなったり、在庫が少なくなれば、アラートを出して教えてくれる。
- 3Dプリント・ショップ
タッチスクリーンを使って欲しい商品のデザインデータをダウンロードし、しばらく待つと実際の商品ができあがる。そんな3Dプリントショップが現実になるだろう。
ワーウィック大学のギボンズ博士は、現在の印刷店は将来3Dプリントショップに置き換わると予想する。あるいは、未来の3Dプリントショップは、昔の公衆電話ボックスのようなものになるという専門家もいる。
なお、すべての人々がハイテクな未来を予想しているわけではない。学者Laura Vaughanは、こんな「未来のショッピング」の姿を予想している。
- バック・トゥ・ザ・フューチャー(過去へ戻る未来)
未来のメインストリートには、肉屋、パン屋、農家の直売店など、懐かしい店々が戻ってくるだろう。オンライン競争の中で失われた人と人のやり取りを求める人々が、再び街に集うだろう。
オンラインショップでの購入が日常になり、従来の「リアル店舗」の多くは、苦しいビジネスを強いられている。そんな中、バーチャルとリアルーーーーーそういう分け方自体がすでに古いかもしれないがーーーーーを融合した新しいビジネスも生まれようとしている。テクノロジーと対峙するのではなく、テクノロジーを積極的に取り込みながら、人間本来の趣き・温かみも加えたあたらしいアプローチ。現在のオンラインショップにはない、ある種の豊かさを与えてくれるような未来のショッピングに期待したい。