サイエンスメディアな日々   インフォグラフィクスな日々

サイエンスのこと・テクノロジーのこと・ビジュアリゼーションのこと

街に溶け込んだアート:Google Street Art Project

f:id:yasuda0404:20140824182132p:plain

ポーランドのストリートアート

 

世界の文化遺産やアート作品を、オンラインでアーカイブする、Google Cultural Institute. すでに数多くの作品がコレクションされている。

その中でも、権威の視点ではなく市民の目線が感じられるコレクションが、Google Street Art Project。僕の勝手な印象だが、もっとも「Googleらしい」コレクションの一つだと思う。

 

ストリート・アートの魅力は、作品単体のユニークさ、迫力もさることながら、作品が日常の風景に溶け込んでいることだろう。それぞれの作品の「キャンバス」は壁や道路、店のファサード、地下通路などさまざまだが、いずれもそこにしかないオンリーワンの素材であり、アーティストの作品と一体化してより大きなメタ作品を創りあげる。そういう視点で見れば、これほど人々の暮らしと一体化したアートはないのかもしれない。

 

それにしても、普通ならそう簡単には見られないストリート・アートを、マウスのクリックだけで世界の隅から隅まであっという間に鑑賞できる。インターネットというメタ・キャンバスは、アートの世界をも急速に変えていこうとしている。

 

f:id:yasuda0404:20140824182103p:plain

f:id:yasuda0404:20140824182114p:plain

ブエノスアイレス

 

f:id:yasuda0404:20140824182108p:plain

メキシコ

 

f:id:yasuda0404:20140824182111p:plain

フランス

 

f:id:yasuda0404:20140824182121p:plain

ポルトガル

 

f:id:yasuda0404:20140824182126p:plain

米国(アトランタ

スマホで操作できるプロ野球応援ロボット:Hanwha Fanbot

http://qz.com/240390/if-you-cant-cheer-for-your-baseball-team-in-south-korea-a-robot-will-do-it-for-you/

韓国のプロ野球チーム、韓華(ハンファ)イーグルスは、長い低迷に苦しんでいる。1999年の初優勝以来、15年間優勝から遠ざかり、負けるとわかっても応援する忍耐強いファンたちは、「石仏」と呼ばれているほどだ。

 

そんな状況をなんとかしようと投入された助っ人は、新しい選手でも監督でもない。(おそらく)世界初のプロ野球応援ロボット「ハンファ・ファンボット」だ。

 

客席の一角を陣取ったロボット応援団は電光掲示板を持ち、ファンがスマホやウェブサイトを通じて入力した応援メッセージを表示する、というしくみだ。また、ファンボットの顔面に埋め込まれたディスプレイに、自分の顔写真を表示することもできる。

f:id:yasuda0404:20140725173025p:plain

f:id:yasuda0404:20140725172701p:plain

下の動画では、ファンボットが応援リーダーとなって、観客が声をあわせて叫んだり、ウェーブを作ったりしている様子がわかる。まさに「応援団」として活躍している。

 

自分の分身が、離れた場所で、自分の代わりとなってリアルなできごとに参加する。「テレイグジスタンス」技術による、新しいスポーツ観戦方法の誕生だ。

 

「IT系企業の平均給与」を可視化する

http://bl.ocks.org/yasuda0404/2c1e1d623841cb06cbdc

"Junichi Niino(jniino)"さんの記事、「IT系企業の平均給与を業種別にみてみた 2014年版 ~ ネットベンチャー、ソーシャル、ゲーム編」は、就活の年齢もとっくに終わり、ヘッドハンティングされることもなさそうな僕にとっても、なかなか興味深い。で、これをインタラクティブなグラフにしてみた。

  

残念ながら、今回可視化したことですごい発見があったわけではないが、次のようなことは言えるのではないだろうか。

  • 全体的な傾向として、従業員数が多いほうが平均給与は高くなる。
  • ネットベンチャー、モバイル・ゲーム分野は企業規模のばらつきが大きい。つまり大企業から零細企業?までいろいろある。(ネットベンチャーってひとくくりにしていいのか?NTTドコモKDDIが「モバイル・ゲーム」に分類されるか?などという疑問はさておいて)
  • ソーシャルメディアアフィリエイトは中規模企業、平均年収も高め
  • SEO/SEM系は中規模から小規模で、平均年収低め(そもそもこのデータでは3社しかないが)
  • 小規模のモバイル・ゲーム系は平均年収のばらつきが大きい
  • オンラインメディアは小規模だが、平均年収は高め

 

インタラクティブグラフでは、プロットにマウスオーバーすると企業の情報を数値で見ることができ、クリックすればその企業の採用ページにジャンプする。また、凡例をクリックして業種をスクリーニングすることもできる。

http://demo.xooms.jp/mytrial/itsalary/

f:id:yasuda0404:20140723184102p:plain

 

今回データの整理をして感心したのは、ほとんどの企業がしっかりとした採用ページを持っていて、しかも(少なくともウェブの情報では)現在も募集中であること。あたり前かもしれないが、やっぱりすごいと思う。

 

※今回のグラフ化コンテンツのソース一式はgithub、および、gistで公開した。作成はjavascriptベースのデータ可視化フレームワークd3.jsを使った。 

 

IT系企業の年収、従業員数、平均年齢

赤外ビームでネットにつながる:Beamcaster by RiT

f:id:yasuda0404:20140722124742j:plain

現代は、何をするにも「とりあえずオンライン」。人とつながるより前に、まずネットとつながらなくては何もできない時代だ。さて、「オンライン」になる選択肢としては、現状、有線接続=ケーブルと無線接続=WiFiがある。

 

有線のケーブルはルーティング作業も、その後、見た目を整えるためにケーブルを「隠す」作業もかなり面倒だ。そもそもモバイルデバイスが主流になった今、有線ケーブルは「レガシー」テクノロジーになりつつある。

無線=WiFiは、このような有線の問題を解決してくれる。導入はすこし面倒だが、一度設定してしまえば、その後の接続は簡単。レイアウトを変えるのも苦にならないし、ネットにつなぎながら自由に動き回れる。しかしその一方で、盗聴や「タダ乗り」といったセキュリティ上の問題がある。また、はっきりとしたことはわからないとはいえ、電波による潜在的な人体への影響が心配だという人も多いだろう。

 

しかし、事実上、この2つ以外の選択肢がない…のだと思っていたら、こんな機器を見つけた。「ビームキャスター」なるこの機器は、簡単にいえば「光線によるネットワークハブ」。

 

「ビームキャスター」は、イベントで使うレーザービーム機器のような筐体。これを天井にとりつけ、オフィスや部屋の機器と光線によって、高速で安全な通信を行なう。

f:id:yasuda0404:20130430090623j:plain

「ビームキャスター」は、人間の目には見えない赤外ビームで通信を行う。機器側は「スマートアウトレット」と呼ぶ機器でビームを「受光」し、通信を確立するというしくみだ。

赤外ビームはピンポイントで照射される(レーザー幅は約2ミリ)ので、電波のように第三者が傍受するのは困難だ。現状ビームの出力は20マイクロワット、到達距離は18フィート(6メートル)に抑えられている。レーザー機器の中ではもっとも安全な、クラス1に入るようにするためだ。

なお、モバイル機器は通常イーサネットのポートをもっていないので、「ビームキャスター」と直接接続することはできない。一般的なWiFiルータが必要となる。

その他機器の詳細はホワイトペーパーを見ていただきたい。

f:id:yasuda0404:20140722125204p:plain

 

 

速度1Gbps仕様のビームキャスターの価格は7000ドル(8個のスマートアウトレット付き)、5Gbps仕様は8000ドル。昨年の夏ごろから販売されているようだ。将来的には100Gbpsも発売する(価格は12,000ドル)とのこと。

 

「ビームキャスター」は、機器のレイアウトが頻繁に変わる場所ーーー展示やイベント会場、仮設オフィスーーや、セキュリティがより重視される状況で、高速通信や機動性も満足したいというユーザには、第3の選択肢となるだろう。

 


Beamcaster - Networking at the speed of light - YouTube

世界初の「ソーシャル・ロボット」、発売へ〜 Jibo by Dr. Cynthia Breazeal @MIT

f:id:yasuda0404:20140717093814j:plain

MITのシンシア・ブリジール博士らが開発した’Jibo(ジーボ)'は、「世界初の家庭用ロボット」。「身長」約28cm、「体重」約2.7kgのABSプラスチック製のコンパクトな「体」には、コンピュータとWiFiLCDスクリーン、カメラ、マイクロフォン、スピーカーなどが埋め込まれ、次のような機能を持っている。 

  • 見るー2つの高解像度カメラで人の顔を追尾、写真の撮影、ビデオ会話ができる
  • 聞くー全方向性マイクと音声認識で、部屋のどこにいてもJiboと話すことができる
  • 学ぶー人工知能アルゴリズムで、ユーザの好みを学習
  • 助けるーユーザの仕事を予測し、日常のタスクを支援する
  • 話すーハンズフリーのリマインダー機能が、やるべきことを教えてくれる
  • 交わるー社交的・感情的な動作によって、より深いコミュニケーションができる

 

Jiboがどんなものなのかは、次の動画を見るのが早いだろう。「家庭用ソーシャル・ロボット」として、Jiboは次のような役割をこなしてくれる。


JIBO: The World's First Family Robot - YouTube

 

 

f:id:yasuda0404:20140717090429p:plain

f:id:yasuda0404:20140717090434p:plain

f:id:yasuda0404:20140717090438p:plain

f:id:yasuda0404:20140717090442p:plain

 

Jiboの最大の目標は「人と交流すること」だが、人間のような顔や手や足は持っていない。「ヒューマノイドロボット」ではないのだ。人が親近感を持つためには、ロボットに生物的・人間的な外観や動きが必要なのでは?と思うかもしれないが、この一見「無機質な」Jiboの形状や動作には、ソーシャルロボットについての長い研究成果が反映されている。

その一端を、ブリジール博士が2010年に行ったTEDトークで知ることできる。ここでは、人とロボットの交流がいまだおこなわれていないという問題意識につづいて、いくつかのソーシャルロボットが紹介されている。その中でも「ミーボット」は、Jiboの原型といえるだろう。ブリジール博士はいくつかの実験結果をもとに、ロボットの表現力を高めることで、ロボットに対する共感や共同意識が強まると述べている。

f:id:yasuda0404:20140720104939p:plain

 

このトークの冒頭で、博士は、ソーシャル・ロボット開発への思いを次のように述べている。

子どものころ、ロボットが私たちと交流しあい、私たちが信頼できるパートナーとなるというアイデアが大好きでした。私たちを喜ばせ、人生を豊かにしてくれたり、銀河の一つか二つ救う手助けをしてくれるのです。そのようなロボットは実在しないことはしっていましたが、それを作りたいと強く思っていました。

 

Jiboは現在Indigogoでクラウドファンディング中だが、30日を残してすでに目標額の3倍近くの出資を集めている。支援者へのJiboの初号機出荷は2015年9月の予定。SDKも公開され、ユーザがオリジナルのアプリケーションを開発することもできる。また同時期には、Jiboのカスタマイズも可能な販売サイト「Jibo Store」もオープンする予定だという。

f:id:yasuda0404:20140717081732g:plain

copyright(c) 2008-, Atsuhiko Yasuda All Rights Reserved.