サイエンスメディアな日々   インフォグラフィクスな日々

サイエンスのこと・テクノロジーのこと・ビジュアリゼーションのこと

インタフェースに関する2つのアプローチ〜「リッチ」と「ミニマム」

日経エレクトロニクス2010年8月23日号にMITメディアラボ石井裕氏へのスペシャルインタビューが掲載されています。
そこで、石井氏はインタフェースには2つの方向性があると述べています。
そのひとつは、センシング技術をキーにハード、ソフトを組み合わせ、実世界の情報を積極的に取り入れるアプローチ。これは、石井氏はもちろん、現在のインタフェース研究開発の潮流のように感じます。
もうひとつについて、石井氏は次のように述べています。


…ユーザ・インタフェースの進化はプレーヤーの感動と無関係とする考え方です。昔ながらのGUIをマウス操作するインタフェース、さらにはキーボードと文字だけを使ったインタフェースでも、のめり込める、すばらしい体験ができるコンテンツが数多くあると思います。ゲームではありませんが、若山牧水石川啄木の俳句、宮沢賢治の詩が、少ない文字数で読者に非常に強烈なインパクトを与えることを考えると分かりやすいのではないでしょうか。表現したいことを書ききらない、ピクセルで描き切らないことによって、プレーヤーが創造で埋める間を残し、ここを埋めることで作品が完結する仮想的な世界を追求する方法です。こうした考え方に沿うと、複雑なインタフェース技術は逆効果になるかもしれません。

これは一見、旧式なアプローチに思えますし石井氏の本意は前者にあるのかもしれませんが、僕自身は、俳句や詩が引合にだされているような「ミニマム・インタフェース」的なアプローチは、前者の「リッチ・インタフェース」とは正反対にありながら、また別の新しい手法かもしれない、と感じました。

インフォグラフィクスのアプローチは現実のデータを、グラフィックと言うある種のメタファーに置き換えるものと言えますが、そこにも「リッチ」と「ミニマム」の両アプローチがありうると思います。

copyright(c) 2008-, Atsuhiko Yasuda All Rights Reserved.