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日本のスパコン開発の凋落:正田秀明氏による「一目でわかる、スパコンシェアの変遷 」

http://wired.jp/2012/04/21/super-computer-share/
我が日本が誇るスパコン「京」が、世界のスパコンランキング「Top500」で2期連続の世界一を達成し、日本のスパコン開発力の復権をたたえる声も聞こえる。たしかに嬉しい出来事だし、素直に喜びたい気持ちもある。しかし、スパコンランキングの全体像を見れば、残念ながら日本は明らかに凋落の一途をたどっているようだ。

Wired日本版Vol.3に掲載された正田秀明氏のインタビューは、日本のスパコン開発の悲惨な現状についての興味深い考察だ。正田氏は日本SGIの社員として我が国のスパコン開発の第一線に携わってきた、スパコン開発の生き字引とも言える人だ。

その正田氏による「一目でわかる、スパコンシェアの変遷 」は、日本のスパコン開発力の推移(すなわち凋落)を一目でわからせてくれる素晴らしいインフォグラフィクスになっている。縦軸は1位〜100位、横軸は1993年から2011年までを表す。日本製スパコンを示す赤色とオレンジ色は、年代が進むにつれ明らかに減っている。つまり、世界100位に入る日本製スパコンはどんどん減っているのが実情なのだ。

その凋落の「主犯」を、正田氏は、国とメーカーの長年にわたるなれ合い関係にあると論じている。大学研究者が学会だけに眼を向け、実用的なアプリケーションの開発を怠たってきた姿勢も批判する。
これらについて僕には論じる知識も経験もないが、他の、やはり凋落する分野から類推するに、納得できる話である。

正田氏は、ソフトな外見や語り口の一方で、眼鏡の奥の眼はいつも厳しく光っている。そんな人だ。メーカーの社員でありながら、研究者でも官僚でもおかまいなく、歯に衣着せぬ意見を述べる。閉塞感が漂う今、真に国民のためになる建設的な批判ができる人は貴重な存在だ。この記事を読んで、それぞれの分野で何かを少しでも変えようと思う人が一人でも多く現れることを望みたいし、僕もその一人でありたいと思う。

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