サイエンスメディアな日々   インフォグラフィクスな日々

サイエンスのこと・テクノロジーのこと・ビジュアリゼーションのこと

もっとも影響を受けた本〜"The Design of Everyday Things" by Don Norman

http://mitpress.mit.edu/images/products/books/9780262640374-medium.jpg
このブログも今回で300エントリー。節目を記念して自分の体験から何かを書こうと考えてみたところ、思い浮かんだのが、Donald Normanの”The Design of Everyday Things(邦訳版のタイトルは「誰のためのデザイン?」)"です。
この本は、プロダクトデザイナーからプログラマーまで「ヒューマンインターフェース」を扱うあらゆる人にとって必読の書です。多くの具体的な事例と的確な整理によって、インターフェースデザインがどうあるべきかを深く理解することができます。この本が出版されたのは1990年、僕が読んだのは2000年頃ですが、書かれている内容は今でも色あせることはありません。むしろ、今、より重要になってきたと思います。

紹介されている事例はどれも示唆に富んでいます。例えば、あるドアの前に立った時、このドアは押せば開くのか、引けば開くのかが直感的に分かるか?と言う事例。「押す」ドアには、ユーザがドアを引けないようなデザインを入れれば良い。当たり前のようですが、この本を読んだ後まわりを見渡すと、押すか引くかわからないドアがなんと多いことか!(スライドさせるドアもあるのでさらにややこしい。)アメリカに行ったことがあればわかると思いますが、むこうのドアは押す側には「バー」しかついていないので、引っ張れない(できないことはないが、かなり握力がいる)ようになっています。
 
この本で学んだのは、「デザイン」が最初に目指すことは人の目を惹くことではなく、求められる機能を実現することだ、と言うことです。日本では、デザイン=意匠と言う捉え方が一般的ですが、そもそも、デザイン=設計、なのです。なぜそういう形にすべきかは、「気持ち良い」とか「かっこいい」とか、ではなく、より効率的、間違いを防げる、等の機能から決まるはずだ、と言うことを肝に銘じなければならない。
"The Design of Everyday Things"が教えてくれた考え方は、サイエンス映像やインタラクティブなコンテンツを作る時も、常に判断基準となっていると思います。実際にはなかなか完璧なデザインには至りませんが。。。

とにかく、この本は僕にとって「永遠のバイブル」です。

copyright(c) 2008-, Atsuhiko Yasuda All Rights Reserved.