この動画を見れば、誰もが驚くだろう。20基の無機質な飛行ロボットが、空中を俊敏に移動しながら正確な隊列を作っていく。それはまるで、意識を持ち、お互いにコミュニケーションしている生物のようである。いや、ある意味では、生物を越えた地球外生命体のような「不気味さ」を感じる…。
その正体は、ナノ・クアッドロータと呼ばれる飛行ロボット。ペンシルバニア大学の、汎用ロボティクス・オートメーション・センシング・認知(General Robotics, Automation, Sensing and Perception Laboratory)研究所、通称、"GRASP"研究所が、自律飛行の研究のために開発中の小型ロボットだ。一見、僕達でも数万円で購入できる"AR Drone"と同じように見えるが、"AR Drone"とレベルが違うのが、その飛行制御能力、つまり、飛行動作の俊敏さと正確さなのだ。
ナノ・クアッドローターの単体は、4つのプロペラを持ち、それぞれのプロペラの回転数は個別に制御することで、自由自在な飛行を行う。2つずつのプロペラが互いに逆回転する「カウンター・ローテーション」によって、回転によるモーメントを相殺し、素早い空中反転も可能だ。「ナノ」と言う名前のとおり、小型であることは重要な要素だ。小型になるほど慣性が相対的に小さくなり、俊敏な動きができるからだ。例えば、鷲と蜜蜂の飛び方が違うのと同じだ。
編隊飛行は、画像解析を使ったシステムで実現されている。部屋の周囲におかれた多数のビデオカメラが、ナノ・クアッドローターを監視し、各ローターの位置と速度をリアルタイムに把握する。その情報を使って、全体を制御するコンピュータが各ナノ・クアッドローターの次の動作を計算し、制御命令が出される。制御命令は1秒間に600回送らているという。
また、カメラやGPSなどのグローバル・ナビゲーションを使わずに、クワッドローターに搭載したレーザーレンジファインダーだけで自律的に飛行するロボットも開発されている。
ナノ・クアッドローターは、将来の無人航空機(UAV)の基礎技術として研究されているものだ。近い将来、ナノ・クアッドローター(のようなもの)が、街中を普通に飛行しているかもしれない。その様子を想像して、直感的に「怖い」を思うのは、生物としての本能なのだろうか。
<開発者、ヴィージェイ・クーマーのTEDトークはこちら>