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他人と自分の体を入れ替える実験が教えてくれるもの:Machin To Be Another Lab

http://www.themachinetobeanother.org/?page_id=1000

自分の体を他人の体と入れ替えてみたいーーーーー。それは、誰もが一度は持ったことがある願望ではないだろうか。将来、テクノロジーの発展によって、その願望がかなう日がくるかもしれない。でも、もしその日が待てなくても、「疑似体験」する方法がある。


バルセロナのアーティストグループによるプロジェクト「Machine To Be Another Lab(他人になる機械研究所)」は、体が入れ替わった感覚を体感する実験を行っている。二名がOculus Riftを装着し、それぞれの頭に固定されたビデオカメラの映像を、互いのOculusで見る。しかけはそれだけだ。実験の肝は、お互いがタイミングをあわせて同じ動作をすること。それによって、まるで自分が他人の体を動かしているような感覚、すなわち、自分tともう一人の体が入れ替わったような感覚を得る。これは、「ラバーバンド錯覚」(目の前のゴム製の手を撫でられているうちに、自分の手のように感じられてくる錯覚)として知られる現象に似たものだ。


実験の様子を収めた動画を通じて、その不思議な体感を想像することができる。Oculus Riftを通して見ている映像を、自分が見ている映像として認識し、やがて体が入れ替わったように感じていく。「自然で、不自然な」な感覚。それは、僕たちが子供の頃、夢見た感覚なのだろうか。

http://www.themachinetobeanother.org/?page_id=1000


「Machine To Be Another Lab」プロジェクトの目的は、体が入れ替わる体験を通じて、他人への偏見をなくし、共感を育てることだという。男性と女性、高齢者と若者、障がいを持つ人と持たない人、人種の異なる人どうしなど、体を入れ替えることで、それまで「他人」だと思っていた人々へのより深い理解とシンパシーが生まれる、という彼らの説明には説得力を感じる。


テクノロジーとは人間の肉体や思考の外部化である、という見方がある。「Machine To Be Another Lab」の実験は、まさにこの「外部化」を体感させてくれるものでもある。テクノロジーによって人間の外部化が進めば、人間の内部も影響を受けるだろう。願わくば、より良い方向に、変わってほしいものだ。

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