Googleの元CEO、エリック・シュミットによる、"How Google Works (グーグルの働き方)"は、すべての「新しいことをやろうとしている人」に、示唆と勇気を与えてくれる素晴らしい指針だと思う。内容はもちろん、絵本のようなデザインもすばらしい。これもまた、「スマートクリエイティブ」をひきつけるカルチャーなんだろう。
少しでも多くの人に知ってほしいと思ったので、不遜ながら、エリック・シュミットがSlideShareに公開しているプレゼン資料を日本語に訳してみた。(でも、「シェア」を尊重するグーグルのカルチャーなので、許してくれると思う。良いアイデアは自ら拡がる力を持っているのだ!)
なお、ニュアンスが伝わっていないところや、意味を正しくつかんでいないところもあるかもしれない。そういう箇所を見つけたら、コメントを「シェア」してくれるとうれしい。
そして、もっと深く理解したい人は、最近発売されたこちらの本を読むのがよいと思う。
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グーグルの働き方
【出典:How Google Works】
エリック・シュミット&ジョナサン・ローゼンバーグ with アラン・イーグル
ジョナサンとエリックがグーグルにやってきた時、ビジネスを成功させる方法はすべてわかってる、って思ってた。
でもすぐに、僕たちがビジネスのやり方について知ってると思っていたことは、ほとんどすべて間違ってることがわかったんだ。
で、このインターネット時代に成功する会社をつくるために、新しいビジネスルールを見つけなければならなかった。
僕たちが学んだことを、今から話そうと思う。
まず、エリックのお気に入りの、この質問から始めることにした。
「何が変わったの?」
何が変わったの?
何が変わったのだろう?
古くなった考え方はどれ?
どうしてあらゆるものが速くなったと感じるの?
僕たちはこう考えている。
テクノロジーは今、あらゆるビジネスを変えつつある。
- 世の中の情報やメディアはすべてネット上にある。
- モバイル機器さえあれば、いつでも、誰にでも、どこにでも、アクセスできる。
- クラウドのおかげで、ポケットの中にスーパーコンピュータをもてるようになった。
その結果、長い間、新規参入者のじゃまをしていた壁がなくなり始めている。
あらゆるビジネスが、競争と淘汰にさらされるようになった。
この変革は、かつてない速さでおき、しかも加速している。
ムーアの法則が、すごい勢いで進んでいるかのように。
企業から消費者へのパワーシフトがおこり、要求はかつてないほど高くなっている。
安っぽい製品では、企業はもたない。少なくとも長くはね。たとえば、いくらうまくマーケティングをやっても、製品がだめだと評価されれば、すべて台無しになる。今は、よい製品を作ることが、勝つことなんだ。
パワーシフトは企業の中でもおこっている。個人や小さなチームでも、大きなインパクトを与えられるようになった。新しいアイデアを試してみて、失敗して、また試す。そうしながら、彼らはグローバル・マーケットで成功している。
とても大きなインパクトを与える力をもった人々を、僕たちはこう呼んでいる:
「スマートクリエイティブ」
スマートクリエイティブとは、テクノロジーの知識、ビジネスの専門性、そしてクリエイティビティを組み合わせて、新しいものを生み出す人々だ。
最新のテクノロジーと十分な自由を彼らの手にわたせば、彼ら・彼女らは、「すごいことを、すごい速さで」やってのける。
問題は、現在のほとんどの企業の経営は、リスクを最小にすることだけを考えていて、スピードを最大化しようとしていないことだ。
- 情報やデータは隠され、共有されていない。
- 経営計画は、失敗が高価で慎重が美徳だった時代のまま。
- 意思決定をおこなえるのは、一部の人々だけ。
つまり、ほとんどの企業のしくみは、遅い。
インターネットの時代、これではうまくいかない。
では、どうすればいいのだろう?
インターネット時代に成功するベンチャーを創る
僕たちが学んだのは、ビジネスを持続的に成功させるたったひとつの方法は、スマートクリエイティブたちをひきつけ、彼ら・彼女らが存分に力を発揮できる環境を作ることしかない、ってことだ。
でも、どうやって?
まず最初は、スマートクリエイティブたちをひきつけること。
彼ら・彼女らは、簡単にはだまされないよ。
まず必要なのは、カルチャーだ。
スマートクリエイティブたちが、働いている場所を気に入ることが大切なんだ。
だから、早くからカルチャーについて考えておくのがいい。
グループが大切にしていることや、働き方や意思決定のやり方についてよく考える(そして、言葉であらわす)こと。
そして、そのスローガンに忠実に、生きること。
これは小さいチームの方がうまくいく。互いの接触をふやして、偶然の出会いを大切にするのがいい。
大きなインパクトを与える人のまわりに、組織を作るんだ。
次にいるのが、戦略だ。
新しいベンチャーのほとんどは、まずビジネスプランを作る。
でも、世の中はすごい速さで変化している。綿密な、MBAスタイルのビジネスプランでは、うまくいくはずがない。
スマートクリエイティブたちはそれを知ってる。がちがちのビジネスプランが、自分たちの自由を奪うことを恐れているんだ。
(ジョナサンがはじめてグーグルにやってきた時、最初の仕事のひとつとして、そんなプラン=計画を作った。ラリー・ペイジは、ジョナサンの計画を見てこういった。「くだらないな。」)
計画をもとに事業を組み立てるんじゃない。
戦略的な理念をもとに組み立てるんだ。
計画を作ることはできる。でも、計画は変わると知っておくこと。たぶん、かなり変わるよ。
計画は流動的だけど、理念は安定している。
良い理念には3つの柱がある。
- 他にない技術的な知見をもとに、より優れた製品を作ること
- 売上ではなく、成長を重視すること。
- 競争を知ること。でも、巻き込まれないこと。
さあ、スマートクリエイティブたちを連れてこよう。
忘れちゃいけないのは、雇用はもっとも重要な仕事だ、ってこと。
みんなそう言いながら、けっきょく雇用は採用担当者にまかせてしまう。
誰もが、そう誰もが、雇用に時間をかけるべきだよ。
さて、これでスマートクリエイティブをひきつけ、雇うことができた。
次は、彼ら・彼女らに、その力を存分に発揮できる環境を与えることだ。
そのためにはまず大切なのは、意思決定の方法だ。
正しい意思決定は、スマートクリエイティブたちに、新しいことをやれるって思わせる。
まずい意思決定は、そのスピリットを殺してしまう。
先進的な会社はたいてい、コンセンサスを重視していると声高に言うよね。
でも、彼らはコンセンサスの意味を誤解している。
コンセンサスは、すべての人が合意することではない。
コンセンサスは、すべての人の意見が共有され、「もっとも優れた」答にみんなが集まることだ。
コミュニケーションは、意思決定とおなじくらい重要だ。
そして意思決定とおなじように、多くのリーダーが自信をもっている。
でも、ほとんどのリーダーはわかってない。
コミュニケーションの基本は、オープンであること。
情報の流れの、速さと量を最大化すること。
これをうまくやれば、ビジネスの「最高の境地」にたどりつけるかもしれない。
… イノベーションだ!
覚えておいてほしい。CEO(最高経営責任者)はCIO(最高イノベーション責任者)でもあるべきなんだ。
イノベーションは、所有することも計画することもできない。できるのは、認めることだけ。
イノベーティブな人々に、イノベーティブであれ、と命じることはできない。でも、そうなるように、しむけることはできる。
達成できない目標を設定すること。そうすれば、よい失敗をしてくれる。
管理部門ではなく、開発現場の声を聞くこと。
技術者たちに、プレゼン資料ではなく、プロトタイプを作らせること。
アイデアはあらゆる場所から生まれる。
これまで話したステップは、起業家だけのものではないし、ハイテク・ビジネスだけのものでもない。
機会はどこにでもある。
スマートクリエイティブはどこにでもいる。
そんな機会を追い求め、そんなスマートクリエイティブたちが集まるチームを作ろうとする野心的な人たちも、いたるところにいる。
必要なのは、大きなアイデアだけだ。
自分自身に問うてみよう。5年後、どんなことが実現されるできるだろうか?
想像できないことを想像しよう。
想像もできなかったことが現実になる、ってよくあることだよね。
そして、未来にかけてみよう。
小さなかけより、大きなかけのほうが簡単、ってこともある。
だって、それは最高の人たちをひきつけるのだから。
さあ、準備はできたかい?
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