建築家ロン・ハリスが「歩く街」を提唱したのは1960年代。ハリスの斬新なアイデアは当時注目を集めたそうだが、今は忘れ去られてしまった。それから50年、ハリスのアイデアを現代の技術で蘇らせようというプロジェクトが提唱された。
スペインの若手建築家・マニュエル・ドミンゲスが学位研究として提案した'A Large Structure'=「巨大な構造物」は、住宅、工場、発電所、空港、娯楽施設など、街の機能のすべてが巨大な構造物の上に実現される。構造物を支えるのは、巨大なキャタピラー。つまり、ハウルの動く城や、ひょっこりひょうたん島のように、街全体が移動することができるのだ。
ドミンゲスは「ユートピア的だ」と謙遜するが、彼の提案はけっして「絵に描いた餅」でもないようだ。鉄製の構造も、全体を支え移動させるキャタピラーも、現状の技術で十分実現可能に見える。
一点に留まっていることが決して安全とは言えなくなった現代。「歩く街」のコンセプトには、僕たちを惹きつけるものがある。